住居費の補助方法には、住宅手当として支給する場合や給料アップに含む場合などが考えられます。企業側にとってはどちらがお得なのでしょうか。

両者の違いと、増減によるトラブルを回避するための施策について解説します。

住宅手当は福利厚生の一種

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(写真=Dziobek/Shutterstock.com)

福利厚生は、法定福利厚生と法定外福利厚生に分類されます。そのなかでも住宅手当は法定外福利厚生であり、法的に基準が定められているものではありません。個々の会社の就業規則などに基準が定められています。

法的基準がないことから、会社経営が順調でない場合など、財務状況に応じて増減しやすくなっています。しかし、従業員の不満を生み出すきっかけとなりますので、減額の際には十分な検討が必要です。

厚生労働省「平成27年就労条件総合調査」によれば、住宅手当の支給割合は45.8%となっています。近年の不況の影響もあり、住宅手当を廃止する企業も出ているようです。

給料のベースアップはさまざまな算定に影響が

住宅手当には支給基準があるため、従業員間で不平等が生じやすい一面もあります。そうした不満を解消するために、住宅手当としてではなく給料アップを図るケースもあります。同額を基本給に上乗せし、住宅補助分をカバーするというものです。

この場合、従業員間の平等を図ることができますが、基本給が上がります。基本給は、ボーナスや退職金などの算定基準に用いられるため、会社の人件費負担が増えることになります。給料の場合は労働契約の一部になるため、たとえ会社が赤字になったとしても即座に減額することは難しくなるという点には注意が必要です。

トラブルを回避するには?

住宅手当の減額を行った場合、従業員の不満が生じる可能性があります。不満が大きくなると労働組合との交渉が必要になる場合もあるでしょう。トラブルの回避には、就業規則に基準を明記することが効果的です。

● 「住宅手当」という名目で住居費の補助をする場合
就業規則に支給基準をきちんと明記することが必要です。業績悪化などを理由とする増減についての基準も定めておくといいでしょう。

● 賃金のベースアップに住居費を含める場合
ベースアップ導入時に住居費の補助が含まれている旨を記載し、増減などについても細かく規定しておくことをおすすめします。賃金に関しては就業規則に明記しておくなど、社内規定で定める必要があります。例えば、細かい算定基準や賃金のベースに住宅手当が含まれる旨の記載など、増減に関して詳細に指定しておくことも後のトラブルの回避に役立ちます。

ただし労働基準法により、就業規則を変更するには労働者の過半数を代表する者の意見を聴取し、変更した就業規則を労働基準監督署に提出するなどの手続きが必要となります。

住宅手当を賃金規定などで定めていなければ、労働組合など労働者側との協議をする必要はありません。しかし就業規則に記載することにより、会社に対して一定の拘束が生じます。労働者側にはメリットとなりますが、会社側には手続きの点などからデメリットになる可能性もあります。

会社にとってのメリットを考慮して選択すべき

住居手当は、福利厚生の一環として従来は多くの企業で支給されてきましたが、社会情勢の変化により、現在では支給している企業も減ってきています。しかし、家計の支出割合で住宅費が大きな割合を占めていることを考慮すると、企業が従業員に対して住宅手当など住居費の補助をすることは従業員のモチベーションの維持向上につながるでしょう。給料アップに含んだり住宅手当で支給したり、支給にはいくつかの方法があります。

社員のための福利厚生、トラブルが起こらないように十分に検討したうえで支給しましょう。(提供: フクリ!

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