ドル円予想レンジ 109.80- - 112.20
“ U.S. strikes Syrian military airfield”“U.S. Strikes Syria Over Chemical Attack”-。これは4/7、複数米紙が一面掲載した見出しだ。
トランプ大統領は声明で、「シリアの独裁者アサドが恐ろしい化学兵器で罪のない市民を攻撃した。化学兵器の使用と拡散を防ぐことはアメリカの安全保障上の重要な利益だ」と述べ、シリア攻撃の意義を強調。米軍のシリア攻撃を受けて投資家心理を示すVIX指数は急上昇し、米10年債利回り、日経平均、そしてドル円は急落した。
トランプ米大統領の策略を冷静に読む円
米戦争権限法では大統領指揮権に制約を課すものの、事後48時間以内の議会報告義務、60日以内の議会承認を得れば問題はない。“正義と反テロ”“人道主義”を掲げたトランプ大統領は、訪米中の習近平国家主席に対し、北朝鮮への覚悟を想起させるには凄まじい圧力になったことは言うまでもない。また、5/9の韓国大統領選挙を控えて「従北・親北」派とされる候補者にも相応の牽制を示した格好だ。
では、このような作戦は極東地政学リスクを意識させ、円高圧力を強めるのだろうか。筆者はその可能性は低いとみている。理由は2つ。ひとつは外債購入でドル売り円買いのヘッジを行っていた本邦大手機関投資家群がそのヘッジを外し、4月新年度入りで円売りを持ち込み始めたとの観測があること、もう一つは世界からの対日直接投資残高推移が増加している点が挙げられる(参照:3月の内閣府データ“対日直接投資の現状について”)。
つまり米国の対日投資などを鑑みると、資産が棄損するような行動はさすがのトランプ大統領でも抑制する、との読みだ。無論、予測不能のトランプ大統領ではあるが、約5時間後にトランプ支持を表明した“同盟国の日本“が窮するような日経平均株価大暴落、日本の対外純資産約336兆円が取り崩されての円急騰を引き起こすとは到底思えないのだ。
ドル円のテーマは本筋へ
もっとも安全保障環境が緊迫化するなかでリスクオンの円売りが強まる可能性は見込み難い。対してドルも3月利上げ時のFOMC議事録では、経済が予測通り成長するなら緩やかな利上げを見込むものの、トランプ政権の政策に不確実性を感じリスクになるとの意見も出ていた。ドルの弱点だ。そうなると4/10週は週末の欧米イースター休暇も控えて極めて大人しい展開になるのではないか。
週足一目均衡表の雲帯上限110.982攻防念頭で、上値焦点は4/3高値111.605、3/31高値112.21。3/20-21高値112.88-91を超えるには相応の大義が求められると推考。下値焦点は3/27-28安値110.095-19、昨年11/18安値109.785。
武部力也
岡三オンライン証券
投資情報部長兼シニアストラテジスト