要旨

  1. 現在、ドル円を巡る相場の材料は盛りだくさんの状況にある。材料を点検すると、米トランプ政権の政策運営に関しては、減税・インフラ投資、保護主義、為替政策の行方が挙げられる。米金融政策に関しては、利上げペースとバランスシート縮小の行方、欧州の政治リスクに関しては、仏大統領選が大きな材料になる。そして、シリアや北朝鮮情勢の緊迫化など地政学リスクの高まりも材料になっている。
  2. 今後については、5月上旬までは円高が進みやすい地合いが続くと見ている。流動的な地政学リスクに加え、米為替報告書、日米経済対話、仏大統領選、米暫定予算期限など重要なイベントが相次ぐ。警戒を要するものが多く、リスク回避の円買いが入りやすい。トランプ政権が円安けん制を繰り出す可能性があるほか、ルペン氏も仏大統領選(1回目)では上位二人に食い込む可能性が高く、110円を割り込む局面も十分想定される。
  3. しかし、5月中旬以降は緩やかな円安ドル高の進行が予想される。仏大統領選の決選投票でルペン氏が勝利する可能性は低い。一連の政治イベントを通過したことで、リスク回避姿勢が緩和するうえ、再び米金融政策がドル高材料になってくると思われる。米経済が今後も堅調を維持することで、FRBは段階的に利上げを継続するほか、バランスシート縮小の議論も煮詰まっていくことが見込まれる。市場では、現在あまり織り込まれていない来年以降の利上げ観測が高まり、ドル高圧力が高まると見ている。
  4. ちなみに、トランプ政権の減税・インフラ投資に関しては、大きな期待はできない。ただし、年の終盤には一部政策の実現が視野に入ってくることで、ドルを多少押し上げる可能性がある。地政学リスクに関しては、流動的で読めないが、主要国同士が直接衝突する形での紛争は避けられると見ている。年末の水準は116円程度と予想している。