残業手当は労働基準法によって計算方法が定められており、通常の給料よりも割増して支給されています。残業による割増賃金は、基礎賃金をもとに計算されます。

この基礎賃金がどのように算出されるかを把握することは、割増賃金による人件費高騰を抑えるために必要なことです。住宅手当のような福利厚生も基礎賃金に含まれるのか、両者の関係について解説していきます。

賃金とは何か?

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(写真=ImageFlow/Shutterstock.com)

労働基準法における「賃金」とは、「賃金、給料、手当、賞与その他名称の如何を問わず、労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのもの」をいいます。しかし、業務上の任務を遂行するために要した費用(例えば営業社員の交通費など)は賃金には含まれません。賃金額を基準としてさまざまなものが算定されます。

例えば、所得税や住民税は賃金額に基づいて計算されます。日本は累進課税制度であることから、賃金額が上がることにより所得税や住民税の税率も上昇します。そのため、賃金は増加しているにもかかわらず、税金を差し引いた手取りは減少してしまうということも起こり得ます。

残業手当の基礎賃金としては?

残業手当は、労働者を保護するための労働基準法上の制度で、労働契約時間外の労働が発生した場合、残業手当として一定の利率を加算した割増賃金を支給することが規定されています。具体的には、「1時間あたりの賃金額」を基礎賃金とし、基礎賃金に残業時間と割増賃金率を掛けて算定されます。割増賃金率は、時間外労働いわゆる残業の場合は1.25になります。

住宅手当は会社側から従業員に対して支給される手当の一つで、住宅費に対して会社が補助するものです。前述のとおり「労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのもの」ですので、住宅手当は原則として賃金に含まれます。

それでは、この住宅手当で支給された金額は基礎賃金に含まれるのでしょうか。何が基礎賃金に含まれるかについては、労働基準法により「厚生労働省令に定められている事項については除外する」と規定されています。除外手当に含まれるのは別居手当、子女教育手当、住宅手当、結婚手当などが該当します。つまり、住宅手当は残業手当の基準となる基礎賃金には含まれません。

このように、福利厚生として支払われているものは基本的に残業手当の基礎賃金にはならないことになります。ただし、住宅手当として会社から従業員に対して支給されているものでも、住宅手当という名称で全員に一律一定額を支給するなど、住居費用に応じて算定して支給されないような場合は除外手当に該当せず、賃金として含まれます。

残業手当などは人件費高騰の原因にも

残業手当は割増賃金率もあることから、会社側からすると人件費高騰の要因にもなりかねません。特に、支給金額が高めである住宅手当が基礎賃金に含まれるかどうかは、気になるところではないでしょうか。

基本的に住宅手当は残業手当の基礎賃金には含まれません。しかし、例外的に住宅手当という名称であっても賃金額に含まれることもあります。福利厚生担当者は住宅手当の運用や支給基準を十分に確認する必要があるでしょう。 (提供: フクリ!

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