若者文化の集積地にして一大発信地となっているニコニコ超会議が、今年も4月29日、30日に開催される。ネットユーザーには大人気のイベントだが、実は2012年の第1回開催以来、黒字になったことは一度もない。

【参考URL】
http://www.chokaigi.jp/

実はスタートから赤字続き

ニコニコ動画
(画像=Webサイトより)

初年度は約5億円という大赤字でスタートし、2年目以降は企業スポンサーの増加などで、徐々に赤字額は減ったものの、昨年の「ニコニコ超会議2016」では、4億円弱と歴代ワースト2位という大赤字に逆戻りしてしまった。

しかしこの事態に、運営側は全く頓着していないようだ。赤字発表の席で、ドワンゴ代表取締役会長の川上量生氏は「この程度の赤字なら全然大丈夫」「赤字が我々のアイデンティティ」と豪語していたし、取締役の夏野剛氏は赤字幅が予想以上大きくなった理由として、当初予定していなかった初音ミクと歌舞伎とのコラボステージ「超歌舞伎」などの大型コンテンツを実施したからと説明していた。

しかしビジネスであれば収益をめざすのは当然のこと。赤字体質を引きずったままで、今後の開催は大丈夫なのだろうか。

赤字を続ける真の目的は?

「超会議」に秘められた目的は、収益以外のところに大きくゴールがあるようだ。

ひとつは会員数の維持だ。現状ではニコニコ動画の有料会員数は頭打ちになっている。しかしここで特筆すべきは、減少はしていないという点だ。現在10〜20代が中心とされるユーザー層が大人になっても会員であり続けていれば、安定的な収益源となる。そのためには、楽しいイベントを間断なく仕掛け、楽しんでもらい、あわよくば友人を誘ってもらえるという期待もある。

もう一つ見逃せないのが、ネットユーザーには「嫌儲」という独特の性向がある点だ。もともとインターネットはFree(自由、無料)というポリシーで始まったこともあり、とくにコアなネットユーザーは金儲けの匂いを極端に嫌う。ドワンゴはこの点をよく理解しているので、イベントはあえて赤字にし、収益の基盤は会員料という日銭で稼ぐ、という周到な経営モデルを構築しているのだ。

ネットメディアが実現する新たなエコシステム

赤字続きではあっても、「ニコニコ超会議」への参加者も協賛企業も、増加の勢いは止まりそうもない。その最大の理由は、ここからつねに新しいカルチャーが生まれるからだ。初音ミクブームの火付け役となったのも、小林幸子の見事な復活劇も、無名の商品がいきなり大ヒットしたのも、多くがニコ動、そして超会議からはじまった。

ユーザー参加型の巨大なネットイベントが、新たな流行、文化を生み、新たなビジネスを創り出し、さらには新たなエコシステムを回し出すという、ネットが既存メディアを超える役割を担う時代なのだ。

テレビやネットなど、さまざまなメディアが複層する今日の状況では、単一のメディアでの影響度や収益化はますます難しくなっている。

今もっとも熱い若者文化を体感できるのはもちろん、これからのメディアのあり方を窺い知れる場として、「超会議」を覗いてみるのも一興だろう。(ZUU online 編集部)