日本国内では、中小企業に限らず大手企業でも同族経営を続ける会社が数多く存在する。先代が苦労して築き上げたビジネスを、ぬるま湯で育った子息が受け継ぎ、会社をうまく経営できないというケースも良くある話だ。その一方で、先代のビジネスを大きく飛躍させ、日本全国、さらには世界的な企業に成長させた2代目、3代目以降の経営者たちも登場している。今回は、会社を大きく育てた2代目以降の経営者に焦点を当てる。

家業手伝いからグローバル企業へ

まず1人目は、「ユニクロ」を展開するファーストリテイリング <9983> の柳井正会長兼社長。柳井会長自身は大学卒業後、ジャスコに入社するも、1年も経たないうちに退職してしまう。

実家のある山口県宇部市では、父親がメンズショップ小郡商事を営んでおり、里帰りしてその紳士服専門店を手伝うようになった。1984年にユニクロ第1号店を広島市に出店し、91年には商号を小郡商事からファーストリテイリングに変更。山口の紳士服店から中国地方を中心にカジュアル衣料チェーンを展開し始めた。98年には1900円で販売したフリースが全国的にヒットし、ブランドのアイコンとなった。

それまで、「洗練されていない」「安物」といったネガティブなイメージがあったが、ヒット商品を世に送り出すことで、ユニクロのブランド力を高めていった。さらには、高級品のカシミヤを手軽な価格で提供したり、世界的なデザイナーのジル・サンダー氏とコラボ商品を発表したり、話題を集める戦略でファン層を拡大。山口県からスタートしたビジネスは、今や国内837店舗、海外958店舗(いずれも16年8月末)にまで販売ネットワークを拡大し、まさにグローバルなファッションブランドにのし上がった。

ユニクロを世界に通じる企業に育て上げた柳井会長は、米経済紙「フォーブス」の日本長者番付2017で、資産額が1兆8200億円で2位にランクインするなど、大きな成功を収めている。

ヤマト運輸の名物2代目小倉昌男氏

同じく名物2代目として名を馳せたのが、ヤマト運輸の故・小倉昌男氏だった。再配達の見直しやドライバーの長時間労働問題に揺れる同社だが、小倉氏こそが、その宅配便の生みの親だ。創業者の父小倉康臣が1919年に銀座でトラック4台から始めた運送会社を1971年に社長として引き継いだ当時は、個人が荷物を輸送するためには郵便局に持ち運ぶ必要があり、重量も6キロまでに制限されていた。

そこに目を付けたのが小倉氏は、それまで小口荷物の取り扱いは集荷と配達に時間がかかるため採算が合わないといわれた業界の常識を打ち破り、小口荷物は1キロ当たりの単価が高く、個数をさばけば収入が多くなるとして、宅配便サービスの開発に着手。76年に宅急便が誕生し、利用者は電話1本で集荷、翌日配達などをコンセプトに事業がスタートした。今日のネットショッピングも支える宅配のインフラ整備に果たした小倉氏のビジネスへの貢献は言うまでもない。

スズキ、星野リゾートは4代目が会社を育てた

自動車メーカー・スズキ <7269> は、直系の同族経営ではなく養子経営で会社の成長を果たした。

垂れ下がった白い眉毛が印象的な鈴木修会長は、2代目の婿養子で、自身は4代目として会社の経営を担った。1978年に社長に就任すると、翌79年にはスズキアルトが大ヒットしたほか、インド政府とスズキ車の合併生産で合意して、インドでトップシェアを誇る自動車メーカーに育てるなど、時代を先読みするようにグローバル展開で成功を収めた。

同じく4代目として会社をグローバル起業に飛躍させたのは、星野リゾートの星野佳路社長。実家は、1914年に軽井沢で温泉旅館を創業し、91年に佳路氏が4代目として社長に就任した。マーケティング調査・分析を導入してリゾートウェディングで一一大ブームを起こし、その後もバブル崩壊で経営難に陥っていたリゾートの再生で地方創生に貢献。その事業展開は、インドネシア・バリ島やタヒチなど海外にも拡大している。

親などから引き継いだビジネスを順調に拡大する経営者もいる一方、立ち行かなくなった先代のビジネスを立て直した2代目もいる。動画配信などを手掛けるU-NEXTはUSEN <4842> から独立したベンチャー企業で、宇野康秀社長は他界した父親からUSENの前身であった大阪有線放送の社長の座を引き継いだ。800億円もの負債を抱えていた会社の事業を、無料のブロードバンド放送サービスなどで立て直し、上場企業まで育て上げた。

2代目が会社を潰すともよく言われるが、成長を遂げる企業の中には、2代目で全国区さらには、グローバル時代においてはユニクロのように世界的なブランドとなり、その指揮をとる経営者も登場している。創業者にも引けを取らないそのビジネスの先見性は、親の名の光でその座を射止めた2代目、3代目だからと言って侮ることはできない。(ZUU online 編集部)