Amazonの宣戦布告−−。

大げさな表現だが、今アマゾンの動向が出版流通業界を騒がせている。相手となるのは出版取次業者である。アマゾンジャパンが出版取次最大手の日本出版販売(日はんばい版)に対し、6月末をもって一部書籍の発注を取りやめる旨を通達した。取次業者を介すという日本の出版流通業界へアマゾンが切り込む。

大手出版社の切り崩しにかかるアマゾン

Amazon,出版業界
(写真=dennizn/Shutterstock.com)

アマゾンジャパンは日販が在庫を持たない書籍に対し、日販を介さず、出版社へ直接発注を行う意向を示した。直接取引が加速すれば、日販の売上高はその分減少する。存在意義が揺らぐ死活問題となり得る為、同社はこの通告に反発している。

アマゾンが直接取引を推し進めるのは、今に始まった事ではない。以前より、「e託販売サービス」という直接取引のサービスを展開してきた。しかし、ここにきて直接取引の流れを加速させる動きを強めている。1月に埼玉県所沢市に設立した「アマゾン納品センター」は直接取引専用の物流拠点と位置付ける。

同社が直取引を推進する理由はサービスと影響力の向上にある。従来の取次業者を介する物流では、取次業者に在庫が無い場合、出版社から取次業者への納品を待つ必要があり、タイムラグが生じていた。アマゾンの目指す、注文から数日での納品というサービスの為には、取次業者を介さず出版社から直接納品する方が早いという考えである。また、直接取引が増えれば、出版社への影響力が増し、より有利な条件で取引を行えるという魂胆もあると見られる。

もちろん出版社にメリットが無ければ従来の枠組みが変わらない事は百も承知である。アマゾンは直接取引のメリットを次のように謳う。まずは売上の最大化である。同社の顧客規模に直接取引によるリードタイムの短縮が加われば、売上は増加すると説く。また、「e託販売サービス」は税抜9000円の年会費さえ払えば、同社が提供するレポートを無料で利用できる。更に、支払いサイトは60日と資金繰り面での利点も訴える。肝心の商品の仕入掛率であるが、和書の場合、ホームページ上では60%と取次業者に劣る条件を提示している。しかし、同社のセミナーでは66%の条件を提示しているとの話もある。出版社の規模により条件を変更している可能性もあり、大手の切り崩しに掛かる中で条件面でのメリットを出す可能性もある。

アマゾンの勧誘により、大手でもカドカワ <9468> などは直接取引へ舵を切っている。

苦境に立たされる出版取次業者

一方、苦境に立たされる出版取次業者はアマゾンの直接取引に警鐘を鳴らす。アマゾンの提示する条件は永続的なものではなく、今後値上げ等の条件変更を強いられる可能性を指摘している。

また書籍は再販売価格維持制度が適用されるが、アマゾンとの直接取引を行えば、各出版社がアマゾンとの再販売価格契約を結ぶ必要がある。取次業者を省けば、アマゾンに再販価格の決定権を握られる可能性もある。これらは中小出版社が中心となる業界団体、日本出版者協議会も指摘している。

反論は行っているものの、出版取次業者の置かれている環境は厳しい。出版科学研究所の調査によると、取次業者経由の出版販売額は1996年をピークに下落が続いている。2014年には業界3位の大阪屋が債務超過危機に陥り、2015年には業界4位の栗田出版販売が経営破綻した。一方でアマゾンは同社の書籍販売数量は増加していると話す。

出版社も難しい対応を求められる。アマゾンの販売力は魅力であるが、従来の取次業者経由の書店販売も切り捨てるわけにはいかない。どちらになびくべきか決めかねている出版社が多い事だろう。大手出版取次業者の株主には出版社が名を連ねる。出版社の意向次第ではアマゾンへ流れが大きく傾く可能性もある。

アマゾンが日本の出版流通業界へ行った宣戦布告は、大きな波紋を呼んでいる。かつての商社不要論にも似た議論であるが、総合商社が商社不要論を一蹴する好業績を残してきたように、出版取次業者は存在価値を示す事ができるのだろうか。(ZUU online編集部)

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