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2014年1月からスタートするNISA制度は、年間100万円までの株式や投資信託について、売却益や配当金・分配金が非課税となるものです。2013年末に証券優遇税制が廃止になるため、NISAの利用価値は非常に大きいといえるでしょう。そこで、ここでは退職者のNISAの利用についてみていきたいと思います。


①退職者が採るべき投資方針

退職者は、勤労者と大きく異なる3つの特徴を有しています。まず1つは、子供が既に独立しており教育費が不要であり、また住宅ローンも完済していることが多いため、出費(キャッシュ・アウト・フロー)が少ないということです。そしていま1つは、職に就いていないため、収入が年金等に限られ、勤労者に比べて収入(キャッシュ・イン・フロー)が少ないということです。そして最後の1つは、退職金を受け取っているため、比較的まとまった資産を保有しているということです。そのため、退職者の資産運用は、勤労者のそれとは異なるスタンスで行う必要があるといえます。

そこで、これらの特徴を踏まえた運用方針について検討してみましょう。
まず、教育費が不要で、住宅取得にかかる費用も必要がない(必要があってもせいぜいリフォームにかかる費用程度)ため、資産形成を目指す必要がありません。つまり、年金収入で不足する分を全額保有資産から取り崩していると、保有資産の減少が大きくなってしまい将来に不安を感じてしまうため、運用収益で不足分の一部を補うことが出来るような運用に取り組むことが考えられます。また、収入が年金等に限られるため、投資で大きな損失を出してしまった場合には、今後の期間でその損失を取り返すということは困難でしょうから、リスクを極力抑えた投資が重要になります。加えて、まとまった資産を保有しているため、利回りが低いローリスクの金融商品で運用しても、相当程度の収益は期待できますので、無理にリスクを取りに行く必要はありません。
これらを勘案すると、安全資産やリスクの低い資産のウェイトを高くして、保有資産の一部のみをリスク資産で運用することが大切になります。具体的には、病気等の急を要する出費に備えて保有資産の4分の1程度を預貯金で運用し、残額で安定的な運用収益を確保するため、4分の1を国内債券、5分の1を先進国債券、5分の1を新興国債券、10分の1を株式や商品、不動産で運用する等のポートフォリオを構築するのがよいでしょう。このようにすることで、リスクを低く抑えつつも一定の運用収益を確保することが出来、年金の不足分を補うことが可能となるでしょう。繰り返しになりますが、退職者にとって最も重要なことは、保有資産を運用した結果大きく減らしてしまったということがないようにすることです。したがって、退職者には、このことを肝に銘じたうえで、運用に励んで頂きたいと思います。


②NISA利用のメリット

退職者は、一般的に、年金等の収入だけでは不足する分を、保有資産の取り崩しによって賄うこととなりますが、子孫へ財産を残すことや自身の長生きのリスクを考慮に入れた場合、保有資産の取り崩しは極力抑えたいものです。そこで有効な手段として、毎月分配型の投資信託の利用が挙げられます。毎月分配型の投資信託では、投資元本が大きく増えることはありませんが、毎月、分配金が支払われるため、原則保有資産を取り崩すことなく、年金の足しにすることが可能です。したがって、上に述べたようなポートフォリオを構築し、それにしたがってそれらを投資対象とする毎月分配型投資信託を購入するのがよいでしょう。その際、預貯金を除いた投資総額が100万円を超える場合(通常超えることが多いと思います)には、100万円まではNISA口座を利用し、100万円を超える分については課税口座を利用するといったように、NISA口座を活用したポートフォリオを組むのがよいといえます。

なぜならNISAでは、年間100万円までの投資信託に関する分配金は非課税となりますので、上記の毎月分配型投資信託をNISA口座で購入すれば、毎月の分配金には税金が課せられないこととなり、有利な運用が可能になります。したがって、NISA口座のメリットを最大限活かせるような形で投資に取り組むことをお勧めします。


③保有資産、収入に応じた金融商品選び

上では、一般的な退職者についてのポートフォリオを挙げさせていただきましたが、これはあくまで一般的なものであり、全ての退職者にあてはまるものではありません。退職者によって、保有資産や家族構成、投資方針等は異なることでしょうから、自分に適したポートフォリオを構築することが必要になります。リスク愛好型の方であれば、リスク資産である株式や商品、不動産等の投資比率が高まるでしょうし、それに対してリスク回避型の方であれば、ローリスク資産である国債や社債等の投資比率が高まることでしょう。しかし、どのような方においても、分散投資は必要です。一つの資産のみに投資をすると、その資産価格が下落したときには大きな損失を負うことになるからです。比較的安全な資産と考えられている国債であっても、価格が下がるリスクは有していますので、債券投資比率を高めるとしても、債券への投資のみにならないように気をつけたいものです。しつこいようですが、退職者にとって最も重要なことは、保有資産を増やすことではなく、極力減らさないようにするということです。したがって、このことを念頭に置いて、リスクを低く抑えた投資を行って頂ければと思います。

2013年末で証券優遇税制が廃止されるため、2014年以降の運用収益に課される税率は、10%から20%に上昇してしまいます。そのため、NISAの非課税枠の利用は、投資を行う上で非常に有効な手段となります。退職者には、NISAを活用することで投資を有利に進め、明るい第二の人生を送っていただきたいものです。

photo credit: 401(K) 2013 via photopin cc

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