リーマンショックやバブルの崩壊等の衝撃的な事象に加え、スマートフォンの普及とともに登場する新しい決済方法や、仮想通貨の浸透などのように、じわじわと世の中の常識を変えていくような現象もみられ、金融業界はまさに「事実は小説よりも奇なり」を地でいくような、スケールの大きな実話に溢れている。

だからこそ、それらの裏に隠された人間ドラマをも合わせて描き出すような小説が、面白くないはずはない。そこでここでは、読み逃す訳にはいかない5作品を紹介しよう。

『しんがり』 清武英利著 講談社2013年

金融小説
(写真=PIXTA)

戦いに敗れた軍の最後列で、追手の攻撃を迎え撃つ者たちのことを、「しんがり」と呼んでいる。

1997年11月、四大証券の一角を占めていた山一證券が自主廃業を発表した。「カネを、株券を返せ」と叫ぶ顧客が店頭に殺到する中、会社に踏み留まって清算業務に就いた一群の社員がいた。給与も出ないままに「しんがり」を買って出た彼らの中心にいたのは、会社幹部に裏切られながらも、業務の監査をしていた人間たちだった。

一生懸命生きていれば、きっと誰かがどこかで見ていてくれる。不安定な経済状況の中で、そうした「しんがり」達の生きざまは、生きることの価値を見失いがちな現代において、その価値を存分に再認識させてくれる作品だと言えるだろう。

『マネーロンダリング』 橘玲著 幻冬舎文庫2003年

状況設定や模写がきわめてリアルな国際金融小説の本書で著者が選んだ舞台は、 アジアでも屈指のオフショア金融センターである香港と日本にまたがっている。

主人公の工藤秋生は、香港に住む34歳のファイナンシャル・アドバイザー(FA)だ。いくつかの金融機関を経て、現在は香港で日本人相手にオフショア関連のアドバイザーをやっている工藤の前に、若林麗子と名乗るゴージャスな美人が現れる。

工藤は普段どおりに麗子に金融のアドバイスを行うが、その数か月後、日本から黒木という男が工藤のもとにやってきたとき、工藤は自分がとんでもない深みに足を踏み入れてしまっていることに気づく。実は麗子は、黒木が関係する50億円を日本から送金し、そのまま行方をくらましているというのだ。

無論本書の内容はあくまでもフィクションなのだが、あらゆる場面に実際の情景や設定が散りばめられており、香港における金融実務の目の当たりに見ることができる。

『メガバンク絶滅戦争』 波多野聖著 新潮社2015年

国債の暴落によって、今や破綻寸前にまで追い込まれた巨大銀行。一夜にして巨大負債を抱え、機能不全に陥った巨大銀行に対し、外資ファンドが買収に名乗りをあげる。エリート行員達が無力に泣き崩れる中で、売国奴たちの野望に立ちはだかったのは、辣腕ディーラーの桂と、気配り総務の二瓶のコンビだった。

本書は、売国奴官僚と謎の外資ファンドが陰謀の網を張り巡らす中で火蓋が切られた、巨大銀行の存亡をかけた決戦を、エンターテインメント性豊かに描き切った新世代経済小説だ。

『金融腐蝕列島』(上下) 高杉亮著 角川文庫1997年

総会屋対策を担当するポストへの異動を命じられた、大手都銀副支店長の竹中治夫は、心ならずも特命事項絡みの不正融資に手を貸すことになる。人事権を握るワンマン会長やその側近たちとの確執、腐敗した政官界、大物総会屋、暴力団との軋轢などなど。本書は主人公の、中堅銀行員としての苦悩や葛藤を通して、「病める金融業界」の内実に迫る問題作だ。

また、金融腐蝕列島Ⅱと位置づけられた『呪縛』(上下)は、検察の強制捜査後、内部の軋轢と外圧にのたうつ大手都銀にあって、再生を願うミドル行員たちの苦闘する姿を描いている。

『貸し込み』(上下) 黒木亮著 日経文芸文庫2015年

脳梗塞患者への過剰融資で訴えられた大手都銀の大淀銀行は、米国在住の元行員である主人公の左近祐介に濡れ衣を着せようとする。裁判での偽証の横行や広報部による恫喝など、なりふり構わぬ銀行に対し、東京地裁の証言台に立つことを決意する主人公。週刊誌の女突撃記者も参戦して、法廷内外で一大バトルが勃発する。

著者自らの体験がもとになっているという本書では、大銀行の歪んだ内幕に加えて、居眠りするエリート裁判官に象徴される「司法の救いようのなさ」や、事なかれ主義の金融行政などがいともリアルに描かれている。(ZUU online 編集部)

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