あおぞら銀行 <8304> が5月8日、本店を移転した。場所は何と大学キャンパス内だ。九段下にあった旧本店より、上智大学四谷キャンパス内にあるソフィアタワーへ移転した。大手銀行が本店を大学の中に構えるのは、国内初となる。同行の意図はどこにあるのだろうか。あおぞら銀行とはどのような銀行なのだろうか。

実利も兼ね備えた本店移転

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(写真=PIXTA)

あおぞら銀行は話題性だけで本店移転を決めたわけではない。上智大学は四ツ谷駅前に立地しており、アクセスの良さは抜群である。また、大学構内に立地はしているものの、大通りに面している為、顧客も入りやすい。更にソフィアタワーは1月に竣工したばかりの新築ビルであり、設備や耐震性も申し分無い。同行にとってみると、実用性と話題性を兼ね備えた物件であったと言える。

上智大学にとっても、安定した賃料収入を得られるというメリットがあり、産学連携も進む。既に高齢者の消費動向について共同研究を始めており、今後はあおぞら銀行の講義も予定されている。

あおぞら銀行とは?

そもそもあおぞら銀行とは一体どのような銀行なのだろうか。一言で表すと「ユニーク」という言葉が当てはまる。「銀行=お堅い」という従来のイメージとは一線を画す銀行である。

あおぞら銀行の歴史は1957年に設立した日本不動産銀行から始まる。日本債券信用銀行に名を変えた後、1998年に経営破たんし、公的資金が注入される。2000年にソフトバンク、オリックス等に買収された後、行名を現在のあおぞら銀行へ変更した。

2003年に米投資ファンドであるサーベラスグループの傘下となり、2012年の株式売却まで経営を握られていた。現在は2015年に公的資金の返済も完了し、メガバンクでも地域金融機関でもない全国展開銀行として独自の地位を築き上げつつある。

2016年3月期末の預金残高(単体)は約3兆円、貸出金残高(単体)は約2兆5000億円とメガバンクの数十分の一の規模であり、中堅地方銀行並の規模となっている。同時点での国内店舗数は主要都市を中心に20店舗であり、インターネットバンクにも力を入れている。

規模の面では他行に劣るものの、同行の戦略が注目を集める事も多い。今回の本店移転もその一つであるが、それだけでは無い。4月から全行員の在宅勤務を認めた事でも注目を集めた。在宅勤務の導入を進める企業は多いが、一部社員に限るケースも目立つ。特に情報管理に厳しい銀行業界において、いち早く全行員に在宅勤務を認めた同行は画期的であると言える。

また、株主還元にも特徴がある。同行の配当は年4回行われる。利益を速やかに株主へ還元する事が狙いであると説明する。年4回配当を行う企業は国内には十数社程度しかなく、配当性向も50%と高い為、個人投資家の人気を集めている。同行株式の個人投資家比率は30%を超えており、他のメガバンク等と比較しても高い。

同行は経営方針の一つに「ユニークで専門性のあるビジネスモデル」と謳っている。他行と横並びでは無く、特徴的な事を行うという意識が全体に流れている。経営破たんから外資系ファンドの経営支配、公的資金返済等、様々な環境を経験してきた事が柔軟な考え方を生み、ユニークな社風を形成していったのかもしれない。あおぞら銀行は銀行のイメージを覆す試みを続けていく。(ZUU online編集部)