2016年10月、フラッシュクラッシュ (瞬間暴落) がポンドを襲った。わずか数分間の間にポンドは対ドルで約6%急落したのである。またその約7分後には3.5%上昇するなど、ポンドの乱高下に投資家たちは肝を冷やしたものだ。

超高速取引 (アルゴリズム取引) が原因との説もあり

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(写真=PIXTA)

ポンドのフラッシュクラッシュの原因は明らかになっていないが、投資家 (人間) の誤操作が原因とする説がある一方、超高速取引が原因とする説もある。超高速取引により、一斉に大量のポンド売り注文が行われたというのだ。どちらにせよ、このフラッシュクラッシュもあり、ポンドは対ドルで、実に31年ぶりの最安値更新になってしまった。

超高速取引とは

ポンドのフラッシュクラッシュの原因として超高速取引とする説があるが、この超高速取引とはどういうものだろうか。

主に機関投資家やヘッジファンドが、自動売買 (AI) ソフトを使用し、売買を行うものである。その呼び名の通り、1,000分の1秒の早さで1つの取引を終了させるという。売買タイミングのプログラミングは様々であるが、経済指標や決算の発表内容、要人の発言を分析させ、マーケットにポジティブな内容であれば買い注文、ネガティブな内容であれば売り注文を出すことが多いようだ。また、大量の注文を高速に行っているため、資産価格の変動率が大きくなることが多い。

今回のポンド急落では、英国のEU離脱交渉に関するニュースや要人発言にプログラミングが反応し、ポンドにとってネガティブな内容と判断され、一斉に大量のポンド売りが発注されてしまったという。

個人投資家が超高速取引と戦うには

それでは、このような超高速取引に対して個人投資家が戦っていくにはどうしたらいいのだろうか。

そもそも、人の手で超高速取引ができないため、同じような方法で対抗するには無理がある。前述のポンド急落の例で言えば、個人投資家が「ポンド急落に繋がりそうなニュースがでたので、ポンドを売れば利益がでそうだ」と思い注文を執行している間に、既にAIは一斉に大量のポンド売り注文を出している。個人投資家が後追いすると、場合によっては急反発前の底値を掴まされかねない。

そこで、現実的な戦い方として以下の2点を挙げたい。

1. 時間を味方につける
超高速取引は、とてつもないスピードで取引を行う。そのために資産価格の変動率は大きくなりがちだが、これは短期の話である。人間が行う投資判断であれば、目先の値動きに惑わされず、その資産が中長期的にみて、買われ過ぎなのか、売られ過ぎなのか判断することができる。中長期のスパンで価値を把握していき、例えば、下落局面のときに買い増すなどの取引をしていくことによって、結果的に利益を得る可能性が高くなる。

2. 企業を体感する
これはおもに株式取引の話だが、超高速取引は、企業の中身で売買を判断することはない。例えば、経営者が良い例だろう。人が行う判断としては、インタビューや取材から感じる人柄、株主総会での受け答え、著書の内容、そういった情報を勘案して「この企業に投資してみよう」と思うこともあるかもしれない。業種によっては、実際に物品を購入したり、サービスを受けたりしてみて企業の実力を測ることも可能だろう。顧客の数、従業員の接客態度、知人友人の口コミも多くの示唆を与えてくれる。

超高速取引に翻弄されない

ITの発達によって、超高速取引による売買が活発になっている。今まで人間にはできなかったことができるようになった反面、そんな時代だからこそ人間にしかできないことの価値も見直されるかもしれない。超高速取引に翻弄されず、個人投資家の強みを活かすことが重要である。(提供: 大和ネクスト銀行

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