総務省は5月16日、「家計調査報告」を公表した。それによると、2人以上の世帯における1世帯当たりの平均貯蓄在高は0.8%増の「1820万円」であることがわかった。この数字をどのようにみるべきだろうか。
世帯貯蓄額の実態 現役世代で貯蓄するのは難しい
1世帯当たりの平均貯蓄額は、アベノミクスがはじまった2012年から4年連続で増加している。思い切った金融緩和政策によって株価は順調に上昇をしてきたが、世間では未だ将来不安が拭いきれず、節約志向が続いている。そのため、貯蓄によって自己防衛する人が増えているのだろう。
「貯蓄額1820万円」という数字は、現役世代のサラリーマンから見ると多いと感じる人が多いのではないだろうか。20代、30代前半の人は給料だけではそれほどの貯蓄をするのは難しいだろうし、30代後半から40代は、住宅ローンを抱えている人が多く、教育費もかかる年代なので、多額の貯蓄をするのは難しいと思われるからだ。
40歳未満「574万円」、40代「1065万円」
年齢別の貯蓄額のデータを見てみると、40歳未満が574万円、40〜49歳が1065万円、50〜59歳が1802万円、60〜69歳2312万円、70歳以上が2446万円となっている。やはり、59歳以下は平均より少なく、60歳以上が平均より高くなっている。特に70歳以上は2446万円と平均値を押し上げていることがわかる。
ちなみに、「平均値」については、あまり解説する必要はないと思うが、全データを加算し、それを個数で割ることによって求められる。その特性から、大きな値があるとその値に平均値が引っ張られるという問題がある。
実際、貯蓄の平均値である1820万円を下回る世帯は67.7%と約3分の2にもなる。つまり、多くの人は1820万円も貯蓄はないのだ。では、世間の人はどれ位貯蓄しているのか。この参考になるのが「中央値」だ。
中央値とは、母集団の分布の中央にくる値をいう。母集団というのは、わかりやすく言えば全データのことである。すなわち、全データの中で真ん中の数字ということだ。データの個数が奇数であれば真ん中の値を取れるが、偶数のときは値が2つになるので、真ん中の2つを加算して2で割った値となる。この結果、中央値より大きい値の個数と小さい値の個数は同数となる。
今回の調査でいえば、対象世帯を貯蓄保有額の少ないものから多いものに順番に並べて、その真ん中にくる世帯の貯蓄額が中央値になる。今回の調査結果では、中央値は1064万円だった。これでも高いと思うかも知れないが、あくまで全体の中央値なので、若い人はこの貯蓄額がなくても気にする必要はない。
中央値に達していないという人はどうすれば良いのか?
自分が中央値に達していないからといって特に気にする必要はない。人それぞれ環境も違うし、貯蓄が多ければよいというわけではないからだ。もっとも、一切貯蓄がなくても良いのかというとそうではないので、しっかりと計画的に貯蓄することは大事である。貯蓄をする前提として収入が高いか低いかということは重要な要素であるが、貯蓄ができる人とできない人の差は、貯蓄に対する考え方の違いにあると言われている。
貯蓄ができる人は、目標額を決めて、毎月必ずその金額を貯蓄に回し、残った金額で生活する。それに対して、貯蓄ができない人は、必要な金額を使い、残った額を貯蓄しようと考える。これらの違いは、貯蓄ができる人は、貯蓄を明確に意識しており、貯蓄をするためには、生活費を切り詰めることも辞さないのに対し、貯蓄ができない人は、必要な額は使って残ったら貯蓄するというように貯蓄に対する意識が低い。
人はお金があると使ってしまうものなので、意識を変えなければ貯蓄は難しい。わかりやすいイメージとしては、財布に500円しかなければ豪華なランチを食べようという気にはならないし、実際に食べられない。それに対して、財布に5万円も入っていれば、2000円位のランチでも、たまには贅沢してもよいかという気持ちになり、実際に使ってしまうこともあるだろう。「収入―貯蓄=支出」と「収入―支出=貯蓄」は数学的には同じだが、人には感情があるので全く違うのが現実だ。
貯蓄するためにはどんな方法があるの?
では、具体的に貯蓄するにはどうしたらよいのかと言えば、一番確実でよいのは、給与天引きで一定額を積み立てるというものだ。会社で「財形」や「社内貯蓄制度」があればそれを利用するとよい。もし、会社にそのような制度がない場合には、給与振込口座から引き落とされる「積立定期預金」や「積立型投資信託」を行うようにするとよい。
この他、せっかく貯蓄してもある程度貯まると使ってしまうという人も多い。さっきの財布の話と同じで預金残高が増えてくると、旅行に行くとか車を買い替えるなどの欲求が出てきしまうものである。この誘惑から逃れる方法して、かんたんに引き出せない運用方法を選択するということも重要だ。たとえば、「確定拠出年金」であれば60歳まではお金を引き出せない。また、貯蓄性の高い「終身保険」なども解約しない限り原則としてお金は使えないので、お金を使ってしまうという欲求を回避するためには、有効な手段である。(ZUU online 編集部)