週足チャートは円安傾向を示す

続いて、もう少し長期間での市場トレンドを見るために、週足チャートでの傾向を見て参ります。図表3はここ1年の円ドルの週足チャート(ローソク足)、6週移動平均(青線)、21週移動平均(緑線)、90週移動平均(赤線)を一覧表にしたものです。

図表3 円ドルの週足チャートと移動平均推移(2013年8月-14年8月)

図表3_週足チャート_2

出所:マネースクエアジャパン < http://www.m2j.co.jp/ >

このチャートを見ると、ドル円のチャートは過去1年、95円~105円のボックスレンジを推移しながら、だんだんと変動が小さくなっており、チャートからも上下に大きく動く可能性があることが示唆されています。また、移動平均の違いを見ると、一番下にある60週移動平均は右肩上がりの推移を示しており、ここ最近の円安傾向を反映して、今後6週移動平均が21週移動平均を超えることが予想されます。ゆえにチャート面からも上下に動く可能性があることが示唆されていますが、その方向は円安傾向に 振 れると出ています。


その他リスク要因は新興国リスクと米国金利上昇

では、実際のリスク要因を考慮して見ると、円安、円高のどちらに振れる可能性が高いと言えるでしょうか?ここでは、(1)地政学的リスク(ウクライナ、イスラエル、アルゼンチン)、(2)QE3縮小による米国の金利上昇 の2つを考慮して見て参りたいと思います。

まず、7月末から8月にかけて新興国の地政学的リスクが顕在化しています。マレーシア航空機の墜落事故から顕在化したウクライナ問題、イスラエル軍のガザ侵攻、そして先日ニュースとなったアルゼンチンの選択的デフォルトです。しばらくはこれらの動きが続くものと筆者は見ております。そこで、アルゼンチンペソの急落や中国の景気減速懸念、トルコリラの下落など新興国リスクが顕在化した2014年1月を例に、どのように円ドルのチャートが動いたのかを見て参ります。

図表4 2013年12月、2014年1月の円ドル日足チャート

図表4_日足チャート

図表4からわかるとおり、円ドルは2013年には円安傾向でしたが2014年に入ると一進一退となり、1月23日、アルゼンチンペソが対ドルで一日に12%下落すると、新興国リスクが意識されて一気に円高が進みます。結果、1月29日にトルコが自国通貨のリラ防衛の為レポ金利(翌日物の金利)を大幅に切り上げるまで、104円台から101円台まで2円以上の円高が進行しました。今回の新興国リスクもさらなる問題が顕在化すれば、円高が進行することになるでしょう。

また、QE3終了による金利上昇の面を考慮すると、通常金利が上昇する国の通貨が高くなるので、金利が上昇するにつれてドル高円安に振れる傾向にあります。これはリーマンショックの前に、円キャリートレードとして金利の低い円を借り、金利の高い国の通貨で運用する取引が多かったため、円安が進行したことからも明らかです。すなわち、QE3終了は円安を促す原因となっています。リスク要因を考えてみると、新興国リスクは円高、QE3終了による米国金利上昇は円安要因となります。


為替相場は新興国リスクと米国金利上昇の綱引き

現在の為替に関する状況を見てみると、新興国リスクと米金利上昇が綱引きをしており、米国金利上昇がじりじりと優位を拡大している為、長期的には円安傾向にあると考えられます。しかしながら、新興国リスクは新興国からの資金引き揚げ→米国国債、安全資産である円の購入→米国債利回り低下、円への需要増大→円高の進行という秘密兵器を持っております。筆者は長期的な円安傾向は避けられないと考えておりますが、新興国リスクが顕在化した場合、円高が急速に進行すると考えられるため、充分にリスクヘッジしておくべきと考えます。

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