「定期的にアプリを利用して症状を病院に報告していたがん患者は、そうでない患者に比べ、平均寿命の中央値が5カ月延びた」 ことが、米国ノースカロライナ大学の腫瘍内科医による実験から明らかになった。

「ePRO」というアプリで、患者は専用のプラットフォームを利用して、呼吸や睡眠障害といった12の症状を自己申告する。症状悪化が報告された場合は担当の看護婦にメールが送られ、病院側が腫瘍内科医による診察を手配するなど、最適な処置がとられるシステムだ。

アプリ利用患者の生存期間中央値は2年半強

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(写真=Thinkstock/Getty Images)

この調査 は2007年から2011年にかけて、ノースカロライナ大学のイーサン・バーチ博士率いる研究チームが766人のがん治療継続患者を観察し、通常のケアと「ePRO」という名称のアプリを利用したケアで、何らかの差異が見られたかを分析したものだ。

患者の年齢の中央値は61歳(26歳から91歳)。86%が白人で、58%が男性、22%が女性という割合で、86%が白人。31%がコンピューター未経験者だった。

766人のうち517人が死亡した後に行われた分析結果では、平均生存期間の中央値に5カ月の差が生じた。通常のケアを受けた患者の生存期間中央値26カ月に対し、「ePRO」を利用した患者の中央値は31.2月だった。

既存の延命治療は月何十万もかかる

調査結果は研究チームの指導者、イーサン・バーチ博士によって、米臨床腫瘍学会の年次会で発表された。

UNC ラインバーガー・コンプリヘンシブ・キャンサー・センターの会員でもあるバーチ博士は、「ePRO」で早期に患者の症状の変化に対応することで、適切な延命処置が可能になる点を主張。通常のケアでは患者が病院に運ばれてくる頃には症状が悪化し、処置できないほど体力が落ちているケースも多いという。

近年、延命に効果があるとされるがんの薬物治療なども出回っているが、高価なのが難点だ。子宮頸がんの進行を遅らせるとして欧州で承認されたロシュ社の化学療法「アヴァスティン」 は、月額6000ドル(約65万6160円)、イーライリリーの胃がん延命治療薬「CYRAMZA」は月額8000ドル(約87万4880円)が必要といわれている。したがって経済的に余裕のあるごく一部の患者のみしか、恩恵を受けることができない。

「ePRO」の商品化が発表される段階に至っていないが、高価な治療薬よりははるかに低コストにおさえられることは間違いないだろう。

イスラエルのスタートアップが商業用アプリを開発

Smart Watchに代表されるモバイル・デバイスで、簡単に健康管理ができる時代だ。テクノロジーを賢く利用して、医療分野を劇的に向上させることも夢ではない。

「ePRO」はニューヨーク・メモリアル・スローンケタリングがんセンター 用に開発されたものだが、バーチ博士は「低コストでほかのデバイスに対応できるシステムに変換することも、けっして難しくはない」と、その先に広がる可能性に期待をよせている。

現時点ではイスラエルのスタートアップ、シヴァン・イノベーション が開発中の「MoovCare」というデバイスが、商業用「ePRO」の位置づけに最も近い。(アレン・琴子、英国在住フリーランスライター)

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