会社員のように本業で給与所得のある人が不動産投資を兼業しているケースは珍しくない。しかし副業問題や別の所得があることが問題となる場合がある。そこで会社員が不動産投資を行う上での「合同会社設立」が重要なツールとなっている。

不動産投資を法人化で運営すると何が違うのか

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(写真=PIXTA)

個人事業で行う事との違いはその税制である。家賃収入の合計によっても変わってくるが個人と法人の税率の違いは30%以上にもなる。さらに法人では経費がコントロールしやすくなり所得を給与化したり、保険加入を活用して修繕費の積立金も有効的に経費化したりすることが可能になる。これらは個人事業レベルでは不可能な部分だ。

しかしサラリーマン投資家たちが法人化を急ぐのには違った理由もあるようだ。

そんな中でサラリーマン不動産投資家に最も注目されているのは「合同会社」である。2006年に有限会社制度がなくなり出来た新設法人だが、税制上もれっきとした会社として扱われる。順調に投資を進めているサラリーマンは家賃と年収を併せると1000万円をすぐ超える。税率が大きく変わるため法人化を考えるのだ。

しかし会社員が合同会社設立を選ぶのには実は違う理由もある。それは社内の「副業禁止規定」だ。属性のいい会社員が務める大企業ほど副業規定には厳しく不動産賃貸業も該当すると解釈され是正を求められるという。家賃収入が軌道に乗った頃に慌てて配偶者を代表者にし、費用の安い合同会社を設立するサラリーマン大家が多いのである。

不動産投資で合同会社を設立する際の注意点

サラリーマンが仕事の合間にできるくらいだから合同会社の設立は決して難しくない。インターネットで設立支援サイトを利用すれば必要書類が簡単に作成できる。申請費用も次にあげる内容である。

  • 登録免許税 6万円
  • 印紙代   4万円

定款を電子定款にすれば6万円の登録免許税だけで手続きは可能になる(費用約3000円)。資本金は1円からでも大丈夫だ。

注意すべきは定款作成日以降に振り込まれた記載が通帳にないと資本金の払い込みとはみなされない点くらいだ。設立が終われば税務署への事業開始届や社会保険加入の手続きを行わなければならないのだが、設立手続きそのものよりもこの点をきっちり検討する必要がある。会社から副業扱いはされなくはなるが、法人での賃貸事業になるため個人の時とは規定はがらりと変わる。

例えば注意すべきは次の点だ

  • 赤字経営でも最低割課税7万円がかかる
  • 法人税務申告が複雑で専門家に依頼する費用がかかってくる
  • 議決権が資本金額に比例せず、決定権が分れる可能性がある
  • 社会保険等の加入義務がある

「これだけか」と思ってすぐ設立するのは危険である。

一般論でのアドバイスで判断しない

法人化を考える時に周囲の投資家や専門家に一般論だけでのアドバイスを受ける人が多い。しかし税務問題が複雑に絡む法人化の方法は個々の条件によって千差万別である。仲間同士で詳細な資産状況や目指している投資の規模も語らず、法人化への助言を受けてもあまり意味がない。

このような談話レベルのアドバイスで副業が禁止されている会社員が勇み足で合同会社を設立するケースが増えている。そして後になって思わぬデメリットに直面している人も少なくない。相続税対策にもなると配偶者だけではなく多数の家族を法人の社員にしたりすると却って議決権が分裂して運営に支障がでるし、高額すぎる給与を配偶者の所得扱いにし、かえって節税にならなかったりといった具合だ。

まずは個々の収益状態をよく検討し、その内容とタイミングについては費用を支払ってでも専門家から精度の高いアドバイスを受けるべきである。後々の面倒を考えると設立はそれからでも決して遅くはない。(片岡美穂、行政書士、元土地家屋調査士)

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