国際オリンピック委員会(IOC)は6月16日、五輪マークを世界中で自社製品の宣伝に使える最高位ポンサーの一社を1997年から担ってきた米ファストフード大手のマクドナルドと契約を3年残し、打ち切ったと発表した。同社は1976年から五輪スポンサーを務め、前回の2016年リオデジャネイロ大会ではアスリートに無料で食事を提供するなど、IOCに何億ドルもの現金を注ぎ込んできた。

この異例の処置に、マクドナルドの株価は悪い影響を受けるかと思われたが、発表後も通常の推移を保っており、かえって上げているくらいだ。投資家が心配していないことがうかがえる。

だが、当初予定されていた2020年の東京五輪のスポンサーを降りることに、「なぜ、今」という声が上がった。その理由は、発表の数日後に明らかになった。

ファストフードを捨て、テクノロジーを取ったIOC

オリンピック,マクドナルド
(写真=Vytautas Kielaitis / Shutterstock.com)

発表当初に推論として挙げられた、マクドナルドの五輪スポンサー撤退の理由は、外食産業の競争激化で収益が悪化していることで、広告戦略を見直し、中核事業への注力だ。この背景には、協賛料の高騰やテレビ視聴率の低下などがあると見られている。これらはマクドナルド側の「内なる事情」である。

だが、今回の決定にはIOC側の事情もあった。マクドナルドとの契約打ち切りから間もない6月21日、IOCは米IT大手インテルとスポンサー契約を結んだと発表した。IOCは、インテルとの契約でオリンピックからの情報発信をハイテク化し、五輪離れを起こしている視聴者へのアピールを強めたかったのである。

次世代の通信規格5Gやプロセッサーの世界公開を控えたインテルは、来る2018年平昌冬季五輪で「360リプレイ・テクノロジー」と呼ばれる仮想現実(VR)の中継技術を用いて、視聴者が自宅にいながらにして、会場のあらゆる角度から高い臨場感で観戦できる体験を提供すると発表した。その技術を使えば、「まるで最前列から競技を観戦しているようにオリンピックを楽しめる」という。

米『フォーブス』誌のコラムニスト、マルコ・チアペッタ氏は、「インテルが五輪スポンサーとなることで、観戦の仕方が革命的に変わる」と評価する。

この技術は平昌だけでなく、2020年の東京や、2024年の開催地(パリかロサンゼルス)でも使われ、IOCはオリンピック観戦に興味を失いつつあった人々を一気に引き戻す計画だ。

また、IOCの財政面からは、オリンピックの「最大の市場」である米国の企業の協賛を取り付けたことになり、利潤の出る大会がしばらくは保証されることになる。

撤退は五輪のオワコン化を象徴?

しかし、世界の論調は厳しい。カナダの有力紙『グローブ・アンド・メール』は一連の動きを評して、「マクドナルドのオリンピックスポンサー撤退は、商業化が過度に進んで人心が離れる五輪がオワコンになりつつあるしるしの一つに過ぎない」とこき下ろした。

一方、英『フィナンシャル・タイムズ』紙は、「(これまでの開催地が軒並み大赤字を出すなか、)新たな候補都市に開催を説得しにくくなっているIOCにとり、インテルとの契約は救いだった」と解説している。

また、英国の広告業界メディアは、「(観客のオリンピック離れだけでなく、)IOCはスポンサー企業にも(収益向上のための)適切なプラットフォームを提供する必要に迫られている」と論評し、オリンピックが内なる変革を遂げなければ、スポンサー企業にも見捨てられる可能性に言及した。

そして、スポンサー交代があった時に、「新しい参加スポンサーが、(台頭著しい)中国企業ばかりにならないようにとの圧力もIOCは受けている」とした。現在の契約企業は12社で、日本からはパナソニック、ブリヂストン、トヨタ自動車が名を連ねている。

このように、マクドナルドの異例の五輪スポンサー撤退は、視聴者の五輪離れで変わることを迫られているIOCに、交代で入る新スポンサーの技術で新たな魅力を視聴者に提供する意図があること、そしてスポンサー側からもオリンピックを収益性のより高いプラットフォームに変革していくことが求められていることを、象徴的に体現する出来事だったのである。(在米ジャーナリスト 岩田太郎)

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