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日銀はインフレターゲット政策を導入して積極的な金融緩和を行っています。日本の場合は長らくデフレ状況にあり、それから脱却する為にインフレ誘導を行おうとしています。これを特にリフレーション政策と呼び、これに賛同する立場を俗にリフレ派と言います。一方でリフレ派には反対派も多く、反リフレ派と呼ばれる事が多いです。

本稿では、リフレ派と反リフレ派がそれぞれどのような考え方を持っているかを紹介します。まず、リフレーション政策についてもう少し詳しく整理した上で、リフレ派・反リフレ派それぞれについて解説します。これにより、両者に相違点はあるものの、共通点も多い事が明らかになります。そして、リフレ派と現在の金融政策との関係について補足します。

リフレーション政策とは

リフレーション政策のリフレーションは「通貨再膨張」とも訳されるように、デフレ状況下がインフレになる事を言います。インフレと言っても経済状況が不安定な国が陥るような高いインフレではなく、マイルドなインフレ率を指します。リフレーション政策とは、金融政策によってマイルドなインフレに誘導する政策を取る事を言います。

リフレーション政策で用いられる金融政策は主にインフレターゲットです。リフレーション政策におけるインフレターゲットは、名目金利がゼロに近い状態になって金融政策が無効化し、実質金利が高い状態である場合に、期待インフレ率を高める事で実質金利を下げて金融政策を有効化する事が目指されます。

期待インフレ率を上げる為に、インフレ目標を設定し、大規模な金融緩和を行う事を市場に約束させ、実際に金融緩和を積極的に行いながら、市場にインフレ期待を抱かせるという手法になっています。インフレターゲットの詳細については別稿で論じますが、ここでは積極的にインフレターゲットを利用するリフレ派の論点と、それに対して懐疑的な反リフレ派の論点を整理します。

リフレ派の論点

湯本(2013:203-206)は、リフレ派の主張の肝を、デフレに対処するために短期金利を下げて流動性の罠の状態に陥った場合でも「アグレッシブな金融緩和を行う事でデフレから脱却できる」と表現しています。

そのロジックは、

(1)マネタリーベースを大きく拡大して短期金利を極限までに下げ、それを維持すると市場に約束する事で、持続的な金融緩和に対する信頼が得られる。

(2)その約束が信頼を得られるには「メッセージが明快かつ断固たるもの」である必要があり、その手法としてインフレターゲットが有効である。

(3)準備供給の際には、長期国債・外国債券・株式など「従来の短期証券以外の資産」を購入する事で、それらの資産の需給バランスが変化し、それが円安を進める。(ポートフォリオ・リバランス効果)

というものです。要するに、従来は短期証券を中心に購入して短期金利を細かく調整するという金融政策が採られていましたが、流動性の罠によって従来の金融政策が無効化した以上、長期国債などに手を出して長期金利の引き下げにも寄与し、極限にまで金利を押し下げる事が目的とされます。その手法と「◯年後に△%のインフレ率」といった明確なメッセージを組み合わせる事によって、積極的な金融緩和が維持されるという信用を与え、期待インフレ率を高めようというのが骨子です。

反リフレ派の論点

一方で反リフレ派の反論はどうでしょうか。湯本(2013:203-206)の整理をまとめると、

(1)中央銀行による長期国債の買い増しは、基本的には民間が保有する国債の満期に至るまでの期間別構成を変える事であり、これは財政当局の仕事であり、中央銀行がする事には実務上の問題がある。

(2)インフレターゲットには「金融政策の透明性や説明責任の向上手段」としてのそれと、「インフレ率引き上げ手段」としてのそれを明確に区別する必要がある。前者には問題が無いが、後者については「目標設定だけでインフレが実現するわけではない」ので問題である。

(3)経済主体の予想は政策で簡単にコントロール出来るものではなく、場合によってはバブルを引き起こす可能性がある。

(4)実体経済面においてデフレを維持させる要因がある中で、金融政策だけで事態を改善することは難しい。

(5)「期待」は漠然と生まれるものではなく、金融政策がどのように経済主体のインセンティブを変化させるかという点について慎重に検討する必要がある。

となります。ここで述べられている最も重要な点は「金融政策に特効薬は無い」という事です。市場に「期待」を抱かせると言っても、政策によって「適度なインフレ期待」が抱かれるかどうかは分かりません。それがバブルを引き起こすかもしれませんし、他の弊害をもたらすかもしれません。また、そもそも実体経済において大きなGDPギャップなどがあり、金融政策だけで事態を解決出来るという「万能感」がそもそもの問題であり、もっと慎重に検討すべきというのが最大の主張です。

両者の共通点と相違点

リフレ派と反リフレ派というと真逆の主張をしているように見えますが、反リフレ派も金融政策を決して否定しているわけではなく、金融政策の重要性は認めています。但し、「その手法と効果について慎重になるべき」という点が異なります。リフレ政策のロジックは分かりやすいだけあって支持が得られやすいのですが、それで全てが解決出来るわけではなく、様々な政策とのバランスを取るべきだというのが反リフレ派の懸念です。

日銀の金融政策との関係

一方で現在の日銀は「異次元緩和」(前述のアグレッシブな金融緩和に当たる)を行う事を約束し、実際に長期国債やETFを買い増しして市場に影響を与えようとしている点で、素朴なリフレ派の主張を忠実に実行しているようです。

安倍政権においても「三本の矢」と称して「大胆な金融政策」・「機動的な財政政策」・「民間投資を喚起する成長戦略」を政策の柱においています。この点を見れば、反リフレ派の主張通りにバランス良く対策を行っているように見えますが、財政政策は大まかな意味では90年代の公共事業などと変わりませんし、成長戦略も今のところ小さな政策が多く、経済に大きな影響を与える政策は見えてこず、現時点では金融政策ばかりが前面に押し出されています。

決して金融政策を否定するわけではありませんが、三本の矢を立てるならば、他の政策とバランス良く行う必要があるのではないでしょうか。

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