築数十年の空き家を相続した場合、場所や建物の状態から、「自分で住むにはちょっと……」となるケースは多いようです。大都会への人口集中、地方を中心とした高齢化・人口減少の急激な進行を考えると、同様のケースはますます増えていくかもしれません。

では、空き家を相続した場合、どうしたらいいのでしょうか。ここでは、「空き家をめぐる課題と相続」について考えてみましょう。

深刻化する「空き家問題」

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(写真=Roman Motizov/Shutterstock.com)

空き家が増えることにはどんな問題があるのでしょうか。まず考えられるのは、老朽化による倒壊など、周辺への被害です。住宅が密集している場合は、隣家に被害を出す場合もありますし、割れた窓ガラス、倒れた塀、落ちた屋根瓦などが人的被害を出してしまうことも考えられます。人が住んでいない家は、日常の手入れがなされていないため、傷みが進んでいることが多いのが特徴です。

また、空き家は周辺環境の悪化の要因となることも多いです。不法侵入の対象になりやすく「空き家火災」のリスクもあります。人が住んでいないのをいいことに、ゴミの不法投棄先に悪用されてしまうケースもあるようです。古い空き家では害虫や害獣が住み着き、繁殖してしまうこともあります。こうした悪影響は、空き家である期間が長ければ長いほど増していくことになります。

このように、空き家は好ましくないものであることが明らかであるにもかかわらず、従来の制度下では、解体して更地にしてしまうと固定資産税が高くなるため、「わざわざ解体費用をかけるよりも放置したほうが得」と思われてしまい、空き家増加に拍車をかけていました。

こうした状況に歯止めをかけるため、2015年には「空き家対策特別措置法」が施行され、2016年度税制改正では、「空き家の発生を抑制するための特例措置(被相続人の居住用財産に係る譲渡所得の特別控除の特例)」が導入されました。

空き家を放置するより活用する方が得な状況へ

この特例措置は、「相続又は遺贈により取得した被相続人居住用家屋又は被相続人居住用家屋の敷地などを、2016年4月1日から2019年12月31日までの間に売却し、一定の要件に当てはまるときは、譲渡所得の金額から最高3,000万円まで控除することができる」というものです。その「一定の要件」とはどのようなものなのでしょうか。

● 家屋の要件
1. 相続の開始の直前において被相続人の居住の用に供されていたものであること
2. 相続の開始の直前において被相続人以外に居住をしていた者がいなかったものであること
3. 1981年5月31日以前に建築されたこと(区分所有建築物を除く)
4. 相続の時から譲渡の時まで事業の用、貸付けの用又は居住の用に供されていたことがないこと

● 譲渡する際の要件
1. 譲渡価額が1億円以下
2. 家屋を譲渡する場合、譲渡時において耐震基準に適合するものであること

上記以外にも条件はありますが、平たく言えば、「更地にするなり、耐震リフォームを施すなりして(活用の目途をつけて)売却すると控除が受けられます」ということです。

特例措置を利用して賢く節税を

今回の特例措置は2019年12月31日までです。しかしながら、空き家問題が今後も深刻化するであろうことを考えると、同様の措置が継続することを期待したいところです。いずれにせよ、「空き家を放置していると税制上は損」という時代になってきたとはいえそうです。(提供: IFAオンライン

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