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「1円円安になると◯◯の利益が△△億円増える」といったような報道がよくされます。こうした考え方は為替感応度の一つですが、為替感応度とは一体何でしょうか。本稿では、為替感応度の定義について説明し、代表的な企業が公表している為替感応度を紹介した上で、製造業・非製造業といった大まかな分類を元に、為替感応度を計算していきます。最後に、公表数値も含めて、為替感応度を見る際の注意点を補足します。


為替感応度とは

為替感応度を簡単に定義すると、「為替相場の変動が企業の売上高や利益に与える影響」であり、もう少し通俗的な言い方をすれば「為替レートが1円変化した時に企業の売上高や利益がどれだけ変わるか」というものです。数学的に定義すれば、「為替レート(A)の変化率に対する売上高・利益(B)の変化率」なので、「売上高・利益の為替レート弾力性(E)」とも定義出来、

E = (⊿B / B) / (⊿A / A)

と定式化出来ます。ここでは例として売上高と利益を出していますが、売上高や利益だけに限らず、売上原価や販売費及び一般管理費など様々なデータの影響を計算する事も可能です。


公表されている代表的企業の為替感応度

為替感応度の公表数値には企業発表のものやアナリストレポートなど様々な種類がありますが、ここでは代表的な企業の為替感応度を定期的に調査し公表しているマネックス証券による公表数値を紹介しましょう。下図1が、円ドルレートと円ユーロレートにおける為替感応度と想定為替レートです。ここでの為替感応度は、為替レートが1円変化した時の営業利益(若しくは経常利益)の影響額を示しています。

想定為替レートは、企業が事業計画や業績見通しを出す時に基準とする為替レートで、企業が発表したものです。2013年度において、業績見通しを上方修正した企業が多いのは、想定為替レートが以下のように90~95円が多く、実際の円ドルレートはそれよりも円安傾向だったからです。

図1:主要企業の為替感応度 出典:マネックス証券「主な輸出関連銘柄の為替感応度と想定レート(2013年7月9日)」

図1:主要企業の為替感応度

出典: マネックス証券「主な輸出関連銘柄の為替感応度と想定レート(2013年7月9日)」 (PDF)


簡易的な分析:製造業の為替感応度

上記の数値は参考にはなりますが、計算方法などがブラックボックス化している部分があるので、ここでは「日本の製造業」と「日本の非製造業」に分けて、それぞれが全体として為替感応度がどうなっているかを見てみましょう。

図2は、日本の製造業の売上高・売上原価・営業利益の推計値と年次平均円ドル名目為替レートの推移と、円ドルレートと各数値との相関係数を示しています。これによると、売上高や売上原価とは殆ど相関がありませんが、営業利益については0.520とある程度相関しています。製造業全般で、それほど高く相関しないのは、「円安による輸出価格へのメリット」と「円高による輸入価格へのメリット」が相殺されている上、業績には為替レート以外に様々な要因があるからです。

図2:製造業の財務数値と円ドルレートの相関関係 出典:円ドルレートは「PACIFIC Exchange Rate Service」、製造業の数値は「法人企業統計年報特集(平成23年度)」

図2:製造業の財務数値と円ドルレートの相関関係

出典:円ドルレートは「PACIFIC Exchange Rate Service」、製造業の数値は「法人企業統計年報特集(平成23年度)」(財務総合政策研究所)

注:円ドルレートは、各月データを平均したものを利用した。製造業の数値は、集計対象における集計値に全法人数をかけた推計値となっている。

とは言え、マクロベースでどの程度営業利益に影響が出るのかを見る事には、為替投資において意義あるものだと思われますので、営業利益を用いた回帰モデルを作ってみましょう。

営業利益を説明する重回帰モデルとして、以下のように仮説を立てます。

営業利益 = a × 円ドルレート + b × CI先行指数 + c × リーマンショックダミー + d

(a, b, cが回帰係数、dが定数項)

CIは内閣府が公表して算出する「 景気動向指数 」のうち「CI(コンポジット・インデックス)」です。先行指数は特に業績に関連すると考えられるので、CI先行指数を利用します。また、2008年・2009年はリーマンショックの大きな影響を受けていると考えられるので、ダミー変数としてリーマンショックダミーを入れます。

分析結果が以下の要約通りで、このモデルで製造業の営業利益の87.3%を説明している事になります。係数は、CI先行指数が1%水準で有意、切片が5%水準で有意、円ドルレートとリーマンショックダミーが10%水準で有意となっています。回帰式は、

製造業の営業利益(億円) = 995.8 × 円ドルレート + 4415.9 ×CI – 43925.3 × リーマンショックダミー - 402088.9

です。円ドルレートが1円変わると日本製造業の営業利益がマクロベースで995.8億円変化するという事になります。

図表3


簡易的な分析:非製造業の為替感応度

同様にして、非製造業についても分析してみましょう。円ドルレートとの相関を見たものが下図3です。営業利益との相関係数が低いのは、製造業と比べれば販売において為替レートの影響を受ける度合いが低いと考えられます。一方で、売上原価は製造業と違って相関している傾向が見られます。これは、小売業など輸入面などで影響を受ける企業が多い事が背景にあるからでしょうか。

図3:非製造業の財務数値と円ドルレートの相関関係 出典:図2と同じ

図3:非製造業の財務数値と円ドルレートの相関関係

出典:図2と同じ

先ほどと同様に回帰分析を行いますが、今度は被説明変数を売上原価に変更してみましょう。説明変数は同じにします。回帰分析結果の要約は下記の通りです。

図表4

回帰式は、

非製造業の売上原価(億円) = 11247.7 × 円ドルレート + 80211.4 × CI + 948683.6 × リーマンショックダミー

です。円ドルレートは10%水準、CIとリーマンショックダミーが1%水準で有意です。切片に有意性は有りません。 この式によれば、円ドルレートが1円変化すれば、非製造業全体の売上原価が1兆1247.7億円変化すると予測出来ます。


公表数値の注意点

為替レートの変化による「製造業の利益」が強調されがちですが、「非製造業の売上原価」にも大きな影響がある事は興味深い点でしょう。ここで行った回帰分析を各企業で行ったり、業種別に行ったりという風に活用する事は可能なので、本稿を機にやってみるのも良いかもしれません。また、この分析を利用して、株式投資やFXに応用してみるのも良いかもしれません。為替レートが変動し各国の経済状況が動くことによる、それぞれの通貨の変化というマクロな動きとして見てみるのも面白いはずです。。最初に紹介した為替感応度の公表数値ですが、計算方法が異なったり、計算方法が明らかにされていなかったりする場合がある事に注意してください。確固たる計算方法があるわけではありませんが、統一した方法で為替感応度を見ないと適切に分析が出来ないので、注意が必要です。


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