固定費である人件費削減は、中小企業にとって大きな負担となります。ですが、事業の継続にとって重要な資源のひとつですが、それでも人に対して支払う人件費については慎重にならなければなりません。従業員の士気を落とさず費用を削減するポイントをまとめました。

(写真=racorn/Shutterstock.com)
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一般企業の人件費統計

厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」によると、一般企業における正社員の平均給与は大企業が38.4万円、中企業が32.0万円、小企業は29.0万円という統計があります。

中小企業の給料が大企業の8割以下という結果です。従業員には報いたいと思う反面、設備の老朽化や事業拡大に伴う設備投資、人手不足を解消すべく採用の強化といった費用の捻出も課題になります。そのため、経費削減の検討になってきます。

経費削減を考えていくうえで、固定費である人件費を減らすことができれば、長期的には大きな効果になります。しかしながら、もともと大企業と比べて少ない給料をさらに下げるようでは、従業員の士気に影響するでしょう。人件費を下げれば生産性が下がり、退職者が出て仕事がまわらなくなれば元も子もありません。

従って、ただ一方的に給与の支給を下げるのではなく、従業員に配慮しつつポイントを抑えて経費削減を行うことが必要です。

ムダ、ムリ、ムラを省く

まずは、現状の給与体系にムダ・ムリ・ムラがないか確認し、あれば改善することをおすすめします。

ムダな残業代が発生していないでしょうか。業務改善によって労働時間を減らすことができれば、割増賃金となる残業代の削減も可能になるでしょう。業務効率化による生産性向上は、企業のノウハウとして蓄積していきたいものでもあります。

業績が右肩上がりになることを前提とした年功序列のような、ムリな制度設計になっていないでしょうか。勿論、年功序列が悪いわけではありません。成果に応じた制度になっているか、経営環境に合った制度かどうか検証することは必要なポイントの一つでしょう。

基本給に対して残業や休日出勤などの付加的な支給が多い場合は、ムラがあるといえるかもしれません。変形労働時間制(フレックスタイム)を採用するなどして、平準化を目指しましょう。

これらのムダ、ムリ、ムラの削減は合理的に説明することできるので、従業員の理解が得られやすいです。

士気を落とさない人件費削減

ムダ、ムリ、ムラを省いて実態に合った給与体系にしていけば人件費削減はしやすいです。ただ、削減一辺倒では従業員の士気を下げることにもなりかねません。メリハリをつけて、支給するときは支給するようにしましょう。

給与で削減した分の一部を賞与で補うようにすれば、メリハリがつきやすいでしょう。例えば賞与の支給額決定における業績評価の割合を増やせば、成果主義による士気の向上が期待できます。ただし、短期的な思考に陥らないようにするため、目標設定などには配慮しましょう。

一つの方法として、決算賞与が上手く機能することがあります。決算賞与とは、通常支給するボーナスとは別に、決算時期に支給します。会社全体の業績がよければ支給し、悪ければ支給しないというように流動的に対応できるメリットがあります。

従業員としても、決算賞与は「あれば幸い」程度の認識で、なかったとしても士気に与える影響は少ないでしょう。少額でも臨時収入は嬉しいもので、会社全体の業績と収入が連動するという主体性や一体感を演出でき、モチベーションを高めることができます。

人件費削減は社員のことも考えて行う

中小企業は大企業と比べて平均給与が少ない実態があります。経費削減の一貫として人件費を考えるときには、従業員の生活に無理がないように配慮する必要があります。残業代の多寡や年功序列の見直しなどムダ・ムリ・ムラを削減すること、賞与をうまく使うなどしてメリハリをつける必要があります。そのなかで決算賞与は社員の士気をあげやすく、おすすめできる手法の一つといえます。 (提供:ビジネスサポーターズオンライン)

※当記事は2017年6月現在の情報に基づき制作しております。最新の情報は各関連ホームページなどをご参照下さい。