ドル円予想レンジ108.80-111.60

「この経済の好循環を力強く回していくこと、このことが安倍政権の最重要課題であります」-。これは8/3の内閣改造後に安倍首相が述べた覚悟だ。翌8/4午前には「謙虚に丁寧に一つ一つ結果を出していきたい」と低姿勢で信頼回復を目指す姿勢を伺わせている。

「安倍改造内閣」の支持率を阻むドル利上げ確率

新たに入閣した茂木経済再生相は「デフレ状況は改善しているが、やるべきことはある」「政府・日銀がしっかり連携し、あらゆる政策で脱デフレを目指す」と強調。7月に政府と二人三脚である日銀が指し値オペを通じて長期金利の上昇を抑制する姿勢を示し、金利面での円買いインセンティブを後退させたが、今般の新体制も円高抑止を含めたデフレ脱却の姿勢に変化はなさそうだ。

しかし、円の対ドル浮揚力は依然、強まらず、8/1には6/15以来の1ドル109円台を示現。トランプ政権の不透明性に加え、米経済指標の鈍さから米金利の上昇力は弱く、日米の金利差をあてにしたドル買いは一段と進みづらくなっている。

8/7週は米金利が上がらない理由として、一部の長期運用機関投資家がリスクに備えての米債買いを強めたことが米債金利低下(債券価格上昇)を招いたとの指摘も聞こえた。米FOMCは追加利上げに慎重との観測裏付けは、シカゴFEDウオッチ(8/4時点)での年内利上げ確率で9月、11月の据え置き予想95%近傍で示されている。

ドルブル派にとっては不利なセンチメントデータだ。

加えて筆者が警戒するのは、今秋にもFRBは保有する米資産圧縮に動くとの可能性に対し、冷水を浴びせかねない7月のCPI米消費者物価指数(8/11・山の日)だ。米政治の停滞感に加えてインフレの伸び悩み、鈍化の再露呈はドル売り場面に繋がりかねず、8/1公表の6月米個人消費支出における4カ月連続での伸びの鈍化が憂いを強める。8月中旬に向けた米債償還・利払い円転思惑は、現実的にはドル・ドル再投資となるが、ドル売り円転仕掛けに利用されかねない局面でもあることも留意しておきたい。

8月第2週のドル円上下焦点

上値焦点は8/3高値110.84、8/2高値111.00。7/28高値111.345を超えれば7/27高値111.72が意識されるが、日足一目均衡表雲下限111.58の抵抗を推考。7/26高値112.22、7/20高値112.43を期待視するも週足一目均衡表雲上限112.20を超えるには相応の材料が求められそうだ。下値焦点は6/15安値109.265、6/14安値108.78を最終橋頭堡と推考。割れた際は4月中旬に示された108円台前半の堅調性(4/17-19安値108.11-31-37)が再度試されそうだ。

為替見通し8-4

武部力也
岡三オンライン証券 投資情報部長兼シニアストラテジスト