ドル円予想レンジ108.80-111.50
「NorthKoreamakingmissile-readynuclearweapons,U.S.analysts say(北朝鮮は核兵器搭載ミサイルを生産:米軍事専門家)」-。これは8/8の米紙見出しだ。北朝鮮が弾道ミサイルに搭載可能な小型核弾頭の生産に成功、との機密分析を米国防情報局が行っているとの内容である。
前後するが休暇中のトランプ米大統領から北朝鮮に向けて「炎と怒り」とした警告発言がなされ、これに対し北朝鮮の国営通信社が、太平洋上の米領グアムに対して中長距離ミサイル攻撃を検討と伝えるなど、米国と北朝鮮の対立が鮮明化した。金融市場では米債価格上昇(金利低下)、恐怖指数(VIX指数)が急上昇し、円とスイスフランは対主要通貨での買い戻し圧力を強めた。
朝鮮半島の脅威は円を揺るがすか
2017年版防衛白書は、北朝鮮が進める核・ミサイル開発について「新たな段階の脅威」と明記。地政学リスクの認識を一段上げた格好だ。「8月」と言えば、筆者は「不戦の誓い」「鎮魂・黙とう」のイメージを抱き、ドル円変動幅も抑制される感を持つのだが、今般は2015年8月の4週連続陰線を引き起こした“チャイナ・ショック”を思い起こした。今後はアジア・極東地域の安全保障を不安定化する“ノースコーリア・クライシス”懸念が深度を強めるかが焦点となる。極東アジアの不安定さが日本経済への直接的脅威となって、円買いが煽られる可能性も否めない。
筆者自身、マティス米国防長官が警告したように北朝鮮自身が「体制の終焉」に繋がる過激な軍事行動を起こすとは想定していない。しかし①8/10(~8/28)の日米合同訓練(陸自・米海兵隊/北海道)、②8/15は北朝鮮祖国解放記念日、③8/21からの米韓合同軍事演習など、緊張の高まる日程が続く。そして朝鮮中央通信が“米領グアムに向けて中距離弾道ミサイルを発射する計画は日本の島根県、広島県、高知県の上空を通過する”など、地域も言及するとした威嚇報は新たな不測事態にも繋がりかねず、円を突き動かす可能性を留意しておきたい。
8月第3週のドル円上下焦点
前号でも指摘したが、8月中旬に向けた米債償還・ドル利払いはドル再投資と読むが、恣意的なドル売り円転仕掛け思惑に利用されかねない局面でもある。上値焦点は8/3高値110.84、8/7高値110.935、8/2-4高値111.00-06。7/28高値111.345を超えれば7/27高値111.72が意識されるが日足一目均衡表雲下限111.58-645の抵抗を推考。下値焦点は8/9安値109.545、6/15安値109.265、6/14安値108.78を最終橋頭堡と推考。割れた際は4月中旬に示された108円台前半の堅調性(4/17-19安値108.11-31-37)が再度試されそうだ。
武部力也
岡三オンライン証券
投資情報部長兼シニアストラテジスト