ドル円予想レンジ107.80-111.00
「NorthKoreaBacksOff(北朝鮮、引っ込む)」-。これは8/14に海外メディアが報じた見出しだ。8/8にトランプ米大統領が北朝鮮に対し「炎と怒りに直面」と警告。対して北朝鮮の金正恩委員長は米領グアム沖への弾道ミサイル発射計画を発表。威嚇と応酬、ブラフ(脅し)は在日アメリカ人約10万人強(民間・軍関係者)、日本の米債保有額1兆1,319億ドル(約124兆円)の存亡も危惧させた。
しかし、8/14に「愚かな米国の行動をもう少し見守る」とした北朝鮮側からの猶予発言報が緊張緩和に動き、17.31まで上昇したVIX指数(恐怖指数)は11.25まで低下している。米朝対立は日米同盟の堅持と結束強化、転じて本邦貿易黒字批判抑制へ、と筆者は睨む。8/14夜に菅官房長官が「市場に何かあれば対応できる態勢を常に取っている」とした発言のウラには、円急騰時の介入容認を米政権から引き出した可能性がある。
ドルがトランプ政権の本質を睨む
しかし、足元のドル安円高地合いに変化は無く、VIX指数は再上昇を伺わせている。その理由は3つ。
①8/21からの米韓合軍事演習を控え、地政学リスクが温存されたままであり、②8/12バージニア州シャーロッツビルで発生した白人至上主義団体と反対派の衝突を巡ってのトランプ大統領対応に共和党有力者、元大統領、軍部首脳、次期FRB議長候補者らが失望や不快を示し、8/14にはギャラップ社の世論調査でトランプ大統領支持率が34%と判明するなど求心力低下が否めず、③労働市場改善が顕著であるものの不安定なトランプ政権や目標を下回るインフレ率の低迷を認識しているイエレンFRB議長が8/24-26「ジャクソンホール会合(カンザスシティ連銀主催)」で矜持である筈の金融引き締め姿勢を後退させる可能性があるためだ。
②に関してはトランプ選挙公約「米国人第一の雇用・米国第一主義」を実現するための2つの助言諮問機関で委員辞任が相次ぎ、解散に追い込まれてしまった。排外主義的なトランプ政権の本質と現実的な多民族・多様性国家アメリカとの不整合性が税制改革・経済政策・財政出動への期待感を萎縮させたのではないか。
ドル円上下焦点
8/21週のドル円上値焦点は8/17高値110.39、8/7高値110.935、8/2-4高値111.00-06、7/28高値111.345。日足一目均衡表雲下限111.645の抵抗留意。下値焦点は8/14安値109.10、8/11安値108.71、週足雲下限108.438、4/17-19安値圏108.12-31-37。昨年11/15安値107.76を最大リスクとして推考。
武部力也
岡三オンライン証券
投資情報部長兼シニアストラテジスト