ドル円予想レンジ107.80-112.00
「SellinMay,andgoaway;don‘tcomebackuntilStLegerday(5月に売って、ここから立ち去れ。そして、セント・レジャー・デー<9月第二土曜日開催の英競馬クラシックレース>まで戻るな)」-。
これは投資格言で有名な教えだが、本年のセント・レジャー・デーは9/9、北朝鮮の建国記念日と重なる。北朝鮮は昨年同日午前9時頃に5回目の核実験を強行。当時は“9/21日銀金融政策決定会合での追加緩和思惑(結果は長短金利操作付き量的・質的金融緩和導入)”が市場のテーマであり、北朝鮮リスクを念頭とした円買い圧力が本年ほど高まっていなかったのが実際である。
喫緊の課題は不透明感による弱気心理払拭
9/4週は前出、9/9の北朝鮮リスク、存在誇示のために過激派組織ISがテロを起こす可能性を、本邦外務省などが排除できないとしている9/1-4のイスラム教犠牲祭、9/3の中国・抗日戦争勝利記念日、9/4米レイバーデーでのNY勢不在、9/5の米議会開始など、予定調和を攪乱する材料に枚挙の暇がない。
ドルに対して筆者が懸念しているのは3つ。
①9/20のFOMCに対し追加利上げ観測が強まらず、長期金利上昇に点火しない状態であること、②トランプ政権と議会の不協和音が現行19兆8000億ドルと定められている債務上限の引き上げ審議を遅延させ米デフォルト(債務不履行)懸念を燻らせていること、③多数の州に被害を拡大させたハリケーン「ハービー」での経済損失予想額が“400億ドル(約4兆4000億円)超”、とした見解があること。
これら、トランプ政権が喫緊の対策を迫られているなかで、FX外国為替証拠金取引でのドル円買比率は急減(ドル売り/円買い)で示された。8/31にムニューシン米財務長官は「ドル安は米貿易にとって若干良い。長期的なドル高は信頼感を示す」とドル安・ドル高双方向の見解を示したものの、弱気派心理を増幅させた格好だ。そうなると9/4週も筆者が懸念している①②③いずれかの進展がなされない限り、反転・強気派の動きは抑制されたままとなるのではないだろうか。
ドル円上下焦点
9/4週のドル円上値焦点は8/6高値110.96、8/2-4高値111.00-06、7/28高値111.345。超えれば日足一目均衡表雲下限111.645、7/27高値111.72、112円台節目、7/26高値112.22を意識か。下値焦点は8/30安値109.535、週足雲下限108.438、8/29安値108.25と推考するが、警戒度を高めて注視しているのは8/29の22時頃から上昇した際の起点108.50圏から8/30安値109.535に向けた上昇価格帯の維持となろう。最大リスクは4/17-19安値圏108.12-31-37。割れた場合は昨年11/15安値107.76を留意している。
武部力也
岡三オンライン証券
投資情報部長兼シニアストラテジスト