先週の日本株相場は底堅い値動きを見せた。29日早朝に北朝鮮が放ったミサイル通過の報を受け日経平均は一時1万9280円まで下げたが、その後3連騰で1万9000円台後半に値を戻した。チャート上では200日移動平均できれいに下げ止まり反発したものの、25日移動平均で頭を抑えられた格好。日経平均は7月下旬から8月上旬のもみ合い相場で25日線にずっと頭を抑えられてきた。上値抵抗線と意識される25日線を抜けることができれば相場のムードも明るくなると期待される。週末、日経平均先物の夜間取引は1万9700円台で終えているが、昨日、北朝鮮がおこなった6回目の核実験はさすがに相場の重石になるだろう。25日線奪回は難しい。一時的に上回っても持続性はないだろう。

焦点は7日のECB政策理事会だ。資産買い入れ減額(テーパリング)に関するスケジュールなどついて今週の会合で決めるという見方が支配的であり、それがこのところのユーロ高の背景になってきた。7月のECB政策理事会でドラギ総裁が秋に政策変更について議論すると述べたからだが、重要なことは明確に9月とは言っていないことだ。むしろ9月ではない可能性に含みを持たせている。7月会合後のドラギ発言は以下の通りである。「われわれはまた、将来的な変更について討議する具体的な日程は設定しないことで、全会一致している。つまり、討議は秋に実施されると単に言ったに過ぎない。われわれは、9月にどのような行動を取るのか協議していない。9月以降に何を行うかについてはなお更だ。日程を設定しないというのが全会一致の意見だ。」(出所:ロイター)

ユーロ圏の8月のコア消費者物価指数は前年同月比で1.2%の伸びにとどまった。ECBのコンスタンシオ副総裁は1日、世界全体で「リフレ」圧力が弱まっているため、ユーロ圏のインフレを押し上げることが一層困難になっているとの見解を示した。今週のECB理事会ではテーパリングが決まらない可能性がある。そうなればユーロは、ここまでの一本調子の上昇の反動でかなりの調整となるだろう。ユーロ安発の円高に注意したい。

9日は北朝鮮の建国記念日で昨年は核実験を行ったが、今年は6回目の核実験を昨日実施した。となると9日にはさらにエスカレートした挑発行為を行う可能性が高いと思われる。その前日にあたる8日は北朝鮮への警戒感と週末のポジション調整もあって、手仕舞い売りが優勢になるだろう。そのような展開は誰でも予想がつくから、ECB理事会の前に、すなわち東京時間7日から売りものがかさんでくるだろう。

冒頭で日経平均の25日移動平均について述べたが、TOPIXのチャートを見ると移動平均との関係はまったく違う。日経平均は7月下旬から8月上旬のもみ合い相場で25日線にずっと頭を抑えられてきたが、TOPIXはそのもみ合い期間中、逆に25日線が下値サポートとなってきた。今回も金曜日の下ヒゲが25日線にワンタッチして止まるなど、むしろ25日移動平均がサポートとなっている。そもそも「押しの深さ」が違う。TOPIXの安値は200日線のずっと上である。8月上旬につけた年初来高値からの下落率は約3%。日経平均は6月の年初来高値から5%超の調整である。

2日におこなった名古屋セミナーで、日経平均ばかりでなく、他の指数も見るべきでは?という質問にまさにその通りと答えたばかりである。東証小型株指数や日経ジャスダック平均は右肩上がりで高値更新が続いている。東証1部全体を対象にしたTOPIXのほうが、わずか225銘柄の日経平均よりも株式市場全体の動きを反映している。小型株や新興市場が強いことは、主力の大型銘柄が下げた局面では押し目買いが入りやすいことの一因でもあろう。

今週のレンジは1万9400円~1万9800円とする。

広木隆(ひろき・たかし)
マネックス証券 チーフ・ストラテジスト

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