ドル円予想レンジ105.00-109.00
「TrumpsayshewouldratheravoidUSmilitaryactiononNorth Korea(トランプ氏は、北朝鮮に対する米国の軍事行動をむしろ避けたいと述べている)」-。これは9/8の英経済紙見出しだ。
軍事力行使は最優先ではなく、外交や経済面での圧力を重視する姿勢を示している。確かに8月中旬に北朝鮮がミサイル攻撃の対象に『グアム』を挙げた当時は米朝の激しい応酬で先行きリスク、不透明感の高まりを示す“VIX(恐怖)指数”は17.28水準まで上昇した。現在も予断を許さない状況に変わりはないが、足元のVIX指数低下は過度な地政学リスクの緊張を後退させた観にも映る。
有事以外のドル円圧迫材料
北朝鮮の威嚇、挑発行為に対して日米韓側の対処が偶発的な衝突を引き起こす可能性は低いと考える。万一の際は本邦対外純資産「約349兆円」が取り崩されての円転、資産回帰の「ドル安・円高」とした教科書的な動意が推考される。
有事において、①1991年1月17日の湾岸戦争開戦(砂漠の嵐作戦)時は「有事のドル安」、②2003年3月19日の米英軍による「イラクの自由作戦」開始時は「有事のドル高」と筆者は記憶している。①については一時反応がドル急落だが、当時の日本は多国籍軍に対し90億ドルの拠出手当に動いたことが中長期観点ではドル暴落を抑制したと見られている。②については、事前の介入によってドル買戻しを余儀なくさせられ、一時反応すべき「有事のドル安」とならなかった。
それは、イラクの大量破壊兵器保有が取り沙汰されて緊張が高まっていた時期で、財務省の外国為替平衡操作実施状況をみると、同年1~3月に合計で2兆円以上もの円売り介入を行っていたとあるのだ。
となれば、通貨当局の動きを振り返ると北朝鮮有事の局面では“逆張り(ドル買い円売り)が有効”、とも読めそうだ。むしろ問題なのは有事以外の“じわりドル安・円高”になりうる材料であり、①ハリケーン『ハービー』と『イルマ』の米経済に悪影響を与える懸念、②9/20のFOMCやFRBの金融緩和正常化に向けた対応萎縮、次期正副議長人事の混迷、③米長期金利低下、④米債務上限問題と予算成立に向けた議会協議の難航、となろうか。北朝鮮有事以外の上記「四重苦」が当面のドル圧迫材料と推考している。
9/11週のドル円上下焦点
上値焦点は一目均衡表雲下限108.43、節目109.00、9/7高値109.28、9/6高値109.41。9月期末のドル資金調達ニーズがドル円を支援するか注視。下値焦点は107.00、昨年11/14安値106.725、11/11安値106.04。最大リスクをトランプ氏が大統領選挙勝利で上昇後の戻り、11/10安値104.945で推考。
武部力也
岡三オンライン証券
投資情報部長兼シニアストラテジスト