決算発表の時期になると多くの投資家の注目を集めるのが、ネットや新聞で伝えられる企業業績の数字です。企業によって業績はばらつきがありますが、増収増益の好決算を見て株価が上がるに違いないと思っていたのに、株価が上がらないどころか逆に下がってしまうことさえあります。ネットや新聞のコメントでは好決算は「織り込み済み」だというのです。さて、いったいどういうことなのでしょうか。

「織り込み済み」材料には株価は反応しない?

(写真=PIXTA)
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マーケットを動かす出来事や要因となるものを材料といいます。
投資家は、少しでも投資のチャンスをねらいあらゆる材料を収集して、株価の動向を予測しながら投資の判断をしています。

ある企業の商品販売が好調で今期の業績が良さそうだという好材料の情報が流れ、投資家の買いが増えて株価が上がったとします。実際に決算の数字が発表されたときには、好決算だったとしても、好業績への期待から先に株価が上がっていたので、予想通りの結果として「材料出尽くし」の利益確定の売りにより株価が下がってしまうこともあります。これが織り込み済みということです。
市場で良くいわれる「期待で買って事実で売る」の格言がありますが、事実が公表されたときにはすでに株価が上昇していることが多く、「期待で買って事実の材料がでたとき売るとよい」と言い伝えられています。

反対に、悪い決算の数字が発表されても株価が下がらないケースもあります。業績が悪いという悪材料の情報が事前に予想されすでに株価は下がっていて、決算発表後にその悪材料が予想どおりであれば強い下げ反応が起こらない場合もあるのです。

相場全体にも「織り込み済み」がある

企業業績だけでなく、相場全体を動かす材料にも「織り込み済み」があります。

アベノミクス解散で行われた2014年12月の衆議院総選挙では与党の圧勝が予想され、事前に株価が上昇していたことで、前評判通りの選挙結果が判明した翌日の日経平均株価は、選挙の公示日の株価より500円を超える大幅下落となりました。投資家に知れ渡っている材料はたいてい「織り込み済み」で、それ以上相場を押し上げるエネルギーにはならないこともあるのです。

株価を動かす「事実」はサプライズ

このように予想された材料は事前に株価に織り込まれ、事実が判明しても株価はそれに反応しないことが多くあります。

一方、事前に誰もが予想しなかった材料が出た時には、株価が大きく動くことがしばしばあります。

2016年1月29日の日銀政策決定会合では、予想されていなかったマイナス金利導入という政策が発表されました。発表直後から株価は急上昇し、日経平均は一時前日比600円弱上昇しました。

このような予想されていない材料をサプライズといいます。株価は、良くも悪くも予想とサプライズで動き「織り込み済み」の材料にはほとんど反応しないという傾向があります。

「織り込み済み」の影響は短期

好決算が発表されても「織り込み済み」だからといって株価が反応しない、または反落するというのは、思惑の段階で期待が先行し株価が買われてしまった影響ということになります。事実が確定した段階では材料出尽くしから新規の買いが出ない一方で、期待で買っていた投資家が利益確定の「売り」を出すなどの需給要因から、株価が上がらない、もしくは下落したりするというわけです。

しかし、これはあくまで一時的な株価の変動であって、好決算という事実は長期的には好材料なことに変わりないと考えられます。従って「織り込み済み」で株価が下がったからといって、慌てて株を売るというのは早計といえるかもしれません。

サプライズについても同じようなことがいえます。

サプライズで相場が動く時は、利益をねらったり、損失を回避するためできるだけ早く動こうとしますから、急に株価が反応するというケースが少なくないようです。好材料がでたときは、時間が経って冷静に考えると、 “さすがに買われ過ぎである”と受け止める投資家が増えて、相場が反落するということがしばしば起こるようです。このように、日銀のマイナス金利導入の際も発表直後に日経平均株価は急騰し、その後軟調に転じました。

さて、ここまでの説明で「織り込み済み」とはどのようなものかおわかりいただけましたでしょうか。「織り込み済み」とは、株価の上げ下げに影響がある情報が一般に公表される前に、すでにそれらの情報がある程度株価に反映されたことをいうのです。株式だけでなく他の投資を行う際にも、ぜひとも意識してはいかがでしょうか。

(提供: お金のキャンパス

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