ドル円予想レンジ110.00-113.30
「中央銀行総裁は政治的な話は差し控えることになっている」-。これは9/21・日銀金融政策決定会合後の黒田総裁発言だ。9/28召集の臨時国会冒頭で衆院解散、10/22衆院総選挙を行う、とした安倍首相のシナリオ観測報について、筆者想定の回答を見せている。
しかし、同日の日銀会合で筆者が想定外と感じたのは、新たに加わった日銀審議委員が現行緩和策では不十分だとして反対票を投じたことだ。デフレ脱却姿勢を先鋭化させた格好であり政権意向を忖度し、更なる追加緩和ムードを煽っているようにも映った。
日銀を牛耳る安倍チルドレン
衆院解散観測報に関して、筆者が推考するのは1点。自民党大敗の可能性が低いことだ。これは衆院選で与党が信認を得た場合は安倍首相の任期延長が確実視され、それに伴い、来年4月が任期満了となる黒田日銀総裁続投の可能性も高まるということを意味する。正副総裁ほか審議委員6名、すべてが安倍政権下で任命された、いわゆる“安倍チルドレン”であり黒田緩和路線の長期継続・再強化、と読むのが普通ではないか。映画タイトルに例えるなら“長短金利操作付き量的・質的金融緩和・ビヨンド”、つまり現策を更に超えていく準備期間なのかもしれない。
では、イエレンFRB議長とトランプ米大統領のように安倍首相と黒田総裁に対立軸はないのか。強いて指摘するなら安倍首相が、2020年度に基礎的財政収支を黒字化する財政健全化目標を先送りの方針で固めている、とされることに対し、黒田総裁は“財政規律が緩めば国債の信認に影響が及ぶ恐れ、金融政策にも影響”とした姿勢である。2013年1月に政府と日銀が結んだ政策協定(日銀は2%の物価目標達成、政府は財政健全化、と双方が一体で取り組む、とした内容)を鑑みれば、日銀総裁の立場から反対表明は当然だ。しかし政府・日銀間での政治的な妥協、決着が進めば、「黒田続投・長期緩和」≒「日米金利差異での円買いインセンティブ低下」とした式も自然に浮かび上がる場面と考えている。
9/25週ドル円
上値焦点は200日線112.15圏、9/22高値112.565、9/21高値112.73、7/17高値112.87。超えれば7/12イエレン議会証言後の戻り高値で7/14の下落起点113.30、7/14高値113.58。下値焦点は日足一目雲上限111.55、週足一目雲上限111.365、9/20安値111.09、9/18安値110.99。割れると日足一目雲下限110.25-09維持が試行され易く最大リスクは9/15安値109.535と推考。9月期末でのドル調達ニーズや投開票日までは為政者による円高抑制期待を抱くがロケットマンリスクも留意。
武部力也
岡三オンライン証券
投資情報部長兼シニアストラテジスト