医療機関の安定した経営を行うためには、医師や看護師などの人的資源に加えて設備投資にも気を配らなければなりません。医療機能を継続させるためには、25年~30年先を見据えた施設や医療機器の大規模な更新は必要不可欠と言えます。実際に医療機関は設備投資にはいくらかかっているのか、そしてどのようにして資金調達を行っているのでしょうか。

(写真=Leszek Czerwonka/Shutterstock.com)
(写真=Leszek Czerwonka/Shutterstock.com)

項目別の設備投資はいくらかかっているのか

少し前のことになりますが、厚生労働省が平成21年に行ったアンケートに対する1,500以上の病院からの回答によると、全体の約4分の3が設備投資を今後計画しているとのことです。また、投資後は運営や維持管理に加え、モニタリングの実施や改善策の検討も意識されています。

また、同アンケートによれば平成16年から20年までの間に病院が完了した最も高額な設備投資は、「医療機器」、「情報化投資」、「建物及び付属設備」で、3つがほぼ同数で上位を占める結果でした。ちなみに「情報化投資」とは、会計や薬剤、電子カルテなどに行われる投資です。また、平均投資額については、「建物及び付属設備」が約16億円、「土地」が約 3.8 億円となり、一般病院や自治体は「建物及び付属設備」への投資額が非常に高い傾向にあります。

加えて医療機器は、病院の設備投資において高額となる傾向にあります。同アンケートによるとCTが最も多く、次にMRIやRIに投資が行われています。その他には、PACS、エコー、アンギオ、デジタルX線TV、PET-CTなどが挙げられています。

医療機関の資金調達方法とは

診療機器などは消耗が早く、5年から6年で更新されるため、医療機関は老朽化に対する設備投資は進める必要があります。同アンケートによると医療機器は約7割が購入、約3割がリースです。また、情報化投資は約6割が購入、約4割がリースという結果です。

また、同アンケートによれば、設備投資に回す資金について、各医療機関は16.72%が自己資金で6.61%が補助金になっています。また、病院債やリース、理事長借入れなどの資金で24.42%が占められており、残りの全投資金額の半分以上は借入金で充当されています。民間金融機関や公的金融機関だけではなく、福祉医療機構から借入を行う場合もあります。

最近ではコスト削減の一環として、病院が共同で医療消耗材などを購入する動きが見られます。全国にある45ヶ所の国立大学病院は、医療消耗材の共同購入を行うことで規格や調達価格を統一し、年間3億円ほどのコスト削減を目指しています。現在は医療消耗材などに限られていますが、今後はMRIなどの医療機器にも範囲を広げ、共同購入の品目を増やすことで経営が安定すると言われています。

2025年に向けて更なる設備投資が必要

資金調達やコスト削減の一環として共同購入がされるなど工夫が行われるものの、2014年に行われた消費税の引き上げなどもあり、医療機関の経営は引き続き苦しい状況が続いているようです。

それに加えて、2014年に成立した「医療介護総合確保推進法」により、各都道府県が団塊の世代が75歳を迎える2025年に向けて「地域医療構想」に基づき、病床機能の分化や連携が必要になります。

そのため、国民に対して効果的かつ効率的に必要な医療の提供を目的とした設備投資等は着実に進める必要があるとして、厚生労働省は「平成29年税制改正要望」を提出し、医療機関の設備投資に関して特例措置の創設による医療機関の税負担の軽減を求めています。

設備投資目的で資金捻出のための工夫は続く

厚生労働省の要望が通り、医療機関に対する税負担の特別措置が増えれば、資金調達額に変化があるかもしれません。ただし、それを期待して待っているだけではいけないと、医療機関は資金調達以外にも、共同購入などの新しい道を模索しています。今後も医療機関によるコスト削減などの新しい取り組みが行われることでしょう。(提供:ビジネスサポーターズオンライン)

※当記事は2017年7月現在の情報に基づき制作しております。最新の情報は各関連ホームページなどをご参照下さい。