結果の概要:個人所得、消費ともに市場予想には一致したものの、前月から伸びは鈍化

9月29日、米商務省の経済分析局(BEA)は8月の個人所得・消費支出統計を公表した。個人所得(名目値)は前月比+0.2%(前月改定値:+0.3%)となり、+0.4%から下方修正された前月からさらに伸びが鈍化、市場予想(Bloomberg集計の中央値、以下同様)の+0.2%には一致した。個人消費支出(名目値)は、前月比+0.1%(前月値:+0.3%)と、こちらも前月から伸びが鈍化、市場予想の+0.1%に一致した(図表1)。価格変動の影響を除いた実質個人消費支出は前月比▲0.1%(前月値:+0.2%)と、こちらも前月から伸びが鈍化、市場予想の▲0.1%に一致した(図表5)。実質個人消費がマイナスとなったのは17年1月以来、7ヵ月ぶり。貯蓄率(1)は3.6%(前月:3.6%)と前月に一致した。

なお、BEAは8月の個人所得、消費支出に8月25日にテキサス州を襲ったハリケーン「ハービー」の影響が反映されているとしたものの、その影響のみを数量的に示すのは困難としている。

一方、価格指数は、総合指数が前月比+0.2%(前月:+0.1%)と前月から伸びが加速、市場予想の+0.3%は下回った。また、変動の大きい食料品・エネルギーを除いたコア指数は、前月比+0.1%(前月値:+0.1%)と、こちらは前月に一致したものの、市場予想の+0.2%は下回った(図表6)。前年同月比では、総合指数が+1.4%(前月:+1.4%)と、こちらも前月に一致、市場予想の+1.5%は下回った。コア指数は+1.3%(前月:+1.4%)と、こちらは前月から伸びが鈍化、市場予想の+1.4%も下回り、15年11月以来の水準に低下した(図表7)。

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1)可処分所得に対する貯蓄(可処分所得-個人支出)の比率。
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結果の評価:個人所得、消費の伸び鈍化はハリケーンが影響した可能性

8月の名目個人所得、消費ともに好調であった7月から伸びが鈍化、実質ベースの可処分所得や個人消費も前月比でマイナスに転じるなど減速を示した。とくに、消費は先日発表された8月の小売統計が前月比▲0.2%(前月:+0.3%)と、ハリケーン「ハービー」の影響もあって自動車関連を中心に落込んでいたことから、減速することは想定されていた。なお、8月の「ハービー」以降も、「イルマ」、「マリア」と相次いで大型ハリケーンが米国に被害をもたらしていることから、9月の消費も、ハリケーンの影響により下振れすることが見込まれる。

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一方、8月の雇用統計ではサンプル調査の時期の関係でハリケーン「ハービー」の影響が含まれていなかったため、これらの影響が含まる10月6日発表の9月統計の内容が、今後の所得や消費をみる上で注目される。

物価(前年同月比)は、総合指数が3ヵ月連続で+1.4%と下げ止まっているものの、17年2月のピーク(+2.2%)を大幅に下回っているほか、コア指数は15年11月以来の水準に低下するなど、17年2月からの低下基調が持続しており、物価上昇圧力はみられない。FRBは、ハリケーンにより、ガソリン価格など短期的な物価上昇について言及しているほか、当面は目標水準(2%)を下回るものの、中期的には目標近辺で安定するとの見通しを変更しておらず、年内追加利上げ見通しを維持している。このため、12月の追加利上げの意思決定において物価の多少の変動は大きく影響しないとみられる。