DeepMacro の雇用統計事前予想は、市場予想の中央値を大きく上回るという。DeepMacroは「市場予想が押し下げられているのはハリケーンの影響だと思われるが、われわれのデータソースはそこまで大きな影響があるとは示していない。」と述べている。ISM製造業景況感指数にも言及し、彼らの見方を補強する材料だとしている。

これは僕が先日出したストラテジーレポート「 雇用統計に賭けろ 2017 」にとって非常にエンカレッジングな内容だ。今回、DeepMacroは雇用統計「予測」を活用したトレーディング戦略を紹介している。今回のように「予測」が市場予想中央値を上回っている場合、金利(先物)の売り、米ドルの買いを推奨するという。この点も僕の先日のレポートでの推奨と一致している。

但し、ひとつだけ違いを述べよう。DeepMacroはリサーチ会社だから、自社のリサーチに自信を持っている。彼らの「予測」が市場予想を上回っているためポジティブ・サプライズになる可能性が高いから、ドルにベットしようというものだ。すなわち「予測」(の精度)に賭けるものだ。

それに対して僕のアプローチは予想に賭けるものではない。僕も今回の雇用統計(NFP)はコンセンサスを上回ると思う(その理由はストラテジーレポートご参照)。だが、僕はそうした僕の「ドタ勘」に賭けることを推奨したりしない。今回の雇用統計イベントは予想が外れて悪い数字が出ても、ドルや株は売られないだろう。悪くてもハリケーンの影響で織り込み済みだからだ。よって、ダウンサイドがない(あるいは限定的な)有利な賭けとなる。僕の推奨は、こうした市場の織り込みによる「賭け率(オッズ)の歪み」を獲りにいく戦略である。

(以下、DeepMacroの見解)

われわれは、DeepMacroの雇用統計「予測」を活用したトレーディング戦略を紹介している。今回は、この戦略を今週金曜発表の雇用統計に当てはめて、説明してみよう。

今月のDeepMacroの雇用統計予測は市場予想の中央値(7.4万人増)を大きく上回っている。市場予想が押し下げられているのはハリケーンの影響だと思われるが、われわれのデータソースはそこまで大きな影響があるとは示していない。(これらのデータソースはDeepMacroの予測には取り入られていないが、10月2日発表のISM製造業指数の結果はわれわれの見方と一致している。)

今回のようにDeepMacro予測が市場予想中央値を上回っている場合、われわれの戦略では金利(先物)の売り、米ドルの買いを推奨している。もちろん、後述の通り、マクロ投資とは常にマルチファクター(複数のファクター)の性質を持っているものであり、投資家の方は、ポジションを取る前に、この情報とご自身の考えとを組み合わせて検討していただきたい。

われわれのデータソースは、月あたり100万件以上の新規求人と新規採用の情報をカバーしている。雇用統計に対する市場の反応を予想するためにこのデータセットを利用する根拠はシンプルなものだ。市場とは、ボトムアップの情報を集約して、金利や為替(米ドル)などについての見方(ビュー)を形成するメカニズムである。もし、われわれが膨大なボトムアップのデータソースを処理することができれば、市場がどのように反応するかを分散型の手法で再現することができるのである。

われわれの戦略の取引ルールはとてもシンプルだ。DeepMacro予測が市場のエコノミスト予想の中央値よりも高かった場合は金利先物の売り(そして米ドルの買い)である。(逆も然り)

株式に関しては、影響の仕方が時間とともに変化している。ポジティブ・サプライズだった場合、利益(earnings)にとっては良いが、金利を引き上げる傾向があるためだ。われわれは、約1年前までは金利の効果の方が強く、ポジティブ・サプライズは市場にとってはネガティブ、と見ていた。しかし最近では、利益の効果が強くなっており、ポジティブ・サプライズは市場にとってポジティブになってきている。Figure 5a と5bでは、DeepMacro予測が市場予想の中央値を上回った場合S&P500を売る、という戦略に基づいた結果を示している。

われわれは対象の資産にベージックで代表的なもの(米ドルと数カ国のG10、新興国の通貨ペア、金利先物、S&P500)を選んだ。過去最もパフォーマンスの良かった資産を選択的に選んだわけではない。われわれが明確にしておきたいのは、マクロ投資とは本質的にマルチファクターである、ということだ。したがって投資家の方は、リスクリワードレシオを改善させるべく、(この戦略以外の)他のファクターについても勘案し、そこで得た洞察も合わせてポートフォリオ構築に応用していただきたい。

Figure 5a と5bでDeepMacro戦略のパフォーマンス結果を紹介する。Figure 5aは、この戦略で5日間保有した場合の各資産のリターン(%)(棒グラフ)と各資産の合計リターン(線グラフ)を示している。ヒット比率(プラスのリターンとなった割合)は、個々の資産については50%から63%の間だが、合計では68%となった。これは、より多くの資産をもつことで、個々の資産がもつ固有のリスクが分散されたことを示しているだろう。これまでわれわれの戦略は良いパフォーマンスを見せているが、今年に関してはDeepMacro予測が基本的に市場予想を上回ってきた一方で、米ドルが軟調に推移してきているため、厳しい年となっている。

Figure 5bは、前述のDeepMacro戦略と、発表時のサプライズの内容に基づいた「サプライズ戦略」のパフォーマンス結果を比較したものだ。このサプライズ戦略では、発表前にNFPの正確な結果が分かっていて、かつこれに基づいて取引することができる、ということを前提としている(当然、実際は不可能だが)。この戦略ではNFPの結果がポジティブ・サプライズであった場合、金利の売り、米ドルの買いを行う。興味深いことに、この戦略のヒット比率(55%)は低く、トータルリターンもDeepMacro戦略より低かった。これは、われわれの「市場はミクロレベルでの変化を処理し、反応する」という主張を間接的に支持するものである。

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広木隆(ひろき・たかし)
マネックス証券 チーフ・ストラテジスト

【関連リンク マネックス証券より】
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