2020年東京オリンピック・パラリンピック開催を控え、インバウンド(訪日外国人旅行)事業がさらに盛り上がっています。九州の玄関口として古くから多くの人が集まり、さらにはアジアの玄関口としても発展し続ける福岡においても例外ではありません。
福岡を訪れる外国人観光客が急増
法務省出入国管理統計によると、福岡空港・博多港における外国人入国者は2014年に約120万人、翌2015年には前年比73.1%増の約208万人、そして2016年には同20.2%増の250万人を突破しました。
福岡を訪れる外国人観光客の7割以上はアジア圏で、日帰りで渡航も可能な韓国を筆頭に、台湾、中国と続きます。飛行機、船、さらに日本の各都市からの空路や陸路、あらゆる方向から多くの人が集まってきているのです。
外国人観光客が年々増加する理由としては円安、そして福岡がアジアに近く、空港や港から市街地へのアクセスが抜群に良いこと、東京や京都ほど有名ではないものの適度に栄えていることなどが挙げられます。
インバウンドに向けた福岡の取り組み
福岡では、魅力を発信しようとさまざまな取り組みが始まっています。
・ オープントップバス
福岡市の西鉄バスでは、欧米の多くの観光地でも見られる観光バス「オープントップバス」を2012年3月より導入しました。これにより、効率よく福岡の街並みを周遊できるツアーを運行しています。2階建てのバスの2階には天井がなく、空や風を身近に感じることができる人気のバスツアーです。
高速道路に乗ってシーサイドエリアを回るコース、博多の街の歴史を紹介するコース、夕景・夜景を楽しむコースなどに分かれ、所要時間はそれぞれ約60~80分、毎日数本ずつ運行しています。同乗するバスガイドの観光案内はもちろん、日本語がわからない外国人観光客向けには、iPodによる英語・韓国語・中国語の音声案内で福岡の街並みを楽しめるようになっています。
・ 免税店
海外旅行者、特に韓国や中国からの観光客が楽しみにしていることの一つが、免税によるショッピングです。福岡では2015年9月の時点で、539店もの免税店が登録されており、これは政令指定都市としては京都(565店)に次ぐ全国第3位となっています。
また、消費税免除の「TAX FREE」だけでなく、関税や酒税等も免除となる「DUTY FREE(空港型免税店)」がデパートにオープンするなど、ショッピングを訪日の目的とする観光客には嬉しい環境が整ってきています。
福岡流のおもてなしは「食・酒」「体験」
訪日外国人がその土地をより楽しむためには、ガイドブックに載っているような観光やグルメだけでなく、地元の人との触れ合いが欠かせません。
・ 立ち呑みで国際交流「Stand by me」
2017年6月、居酒屋を1階に構えたホステル「Stand by me(スタンドバイミー)」が福岡市中央区大手門にオープンしました。国内外からの観光客の滞在だけでなく、近所の住民がふらりと立ち寄ってお酒を飲みながら交流できるのが特徴です。
誰もがお金を気にせず気軽に立ち寄れるよう、フードやドリンクと交換できる木札は4枚1,000円というお手頃な価格設定となっています。
「Stand by me」は訪日外国人の滞在先としての目的だけでなく、地元の若者がさまざまなバックグラウンドを持つ観光客に刺激を受け、元気になる場所としての役割も期待されています。
・ 「SUiTO Fukuoka」で異文化体験
福岡の市街地にいくつかある観光案内所の中でも、「SUiTO Fukuoka」(福岡市中央区今泉)は日本の文化を身近に感じられる体験型の国際交流の場です。
「SUiTO Fukuoka」では、地元の人だからこそわかる福岡の観光案内をはじめ、着物を着たり寿司やたこ焼きを実際に作ったりといった「和文化体験」が人気です。外国人観光客だけでなく誰でも参加可能で、英語を使った料理教室やフランス語・英語のみ使用可のバータイムなど、福岡にいながらにしてインターナショナルな雰囲気を楽しめる場所としても注目されています。
「SUiTO」は、博多弁の「好いとう」に由来しています。福岡を訪れた人に、もっと福岡や日本を好きになってもらうためのインバウンド拠点として、福岡市民が海外に目を向けるきっかけとして、身近な異文化コミュニケーションの発信基地となりそうです。
新交通網として、博多駅と博多港を結ぶロープウェイの構想も出ており、観光やショッピングなど、訪日外国人向けのサービスを少しずつ充実させている福岡市。コンパクトシティとしての魅力はもちろん、隣り合わせた人とすぐに仲良くなる屋台文化に象徴されるように、人と人との触れ合いを大切にする福岡県民の気質は、インバウンド事業で大切な要となっているのかもしれません。
(提供:JIMOTOZINE)