日本の高速鉄道といって、まず頭に浮かぶのは新幹線でしょう。少し特別な乗り物というイメージがある新幹線が、住人たちの大切な足となっている町が福岡県にあります。片道運賃は乗車券200円と特急料金100円の300円。その町は、福岡市から13キロメートルの場所にある福岡県那珂川町です。

新幹線の開通前は田園風景の広がるのどかな町でしたが、新幹線の車両基地が作られ「博多南線」が開通してからというもの、この町に転機が訪れます。人の流れを変えた300円新幹線と、変貌をとげた那珂川町について紹介します。

なぜ実現した!?300円新幹線

(写真=PIXTA)
(写真=PIXTA)

1975年に山陽新幹線は延伸し、博多駅まで開通。東京からの1,200キロメートルは一気に縮まり、福岡は九州の玄関口となります。新幹線の開通に合わせて、那珂川町と春日市をまたいで新幹線のメンテナンスを行う車両基地が作られました。

博多駅で営業を終了した新幹線は、車両所まで回送列車として移動します。車両基地近くの住民たちは誰も乗っていない新幹線を見て、「この新幹線に乗れないだろうか?」と考えました。当時の那珂川町から福岡市中心部への交通手段はバスのみで、1時間近くかかります。那珂川町の行政は当時の国鉄、運輸省へ交渉し、地元住民の熱い要望により1990年に「博多南駅」が車両基地の一角に作られたのです。こうして、在来線扱いの新幹線が誕生しました。

これにより、那珂川町は大きく変化します。深刻な過疎化に悩んでいたのが嘘のように、人口がどんどん増加する人気タウンとなったのです。

新幹線が開通した那珂川町ってどんなところ?

「博多南線」の開通後、バスで約1時間かかっていた那珂川町から博多までの移動は、約9分に短縮されました。福岡市は日本の政令指定都市の中で人口の増加率がトップの街ということもあり、ベッドタウンとしての那珂川町に注目が集まります。

その結果、那珂川町は2018年10月1日の市制移行を目指しています。町が市に昇格するには、5年に一度の国勢調査で人口5万人を達成する必要があります。那珂川町は、2010年の国勢調査で惜しくも220人足りず市への昇格ができませんでした。そこで次の国勢調査で達成すべく、町内に住宅を取得すると固定資産税を5年間で最大100万円補助し、物件によっては家賃を6ヵ月無料とするなどの優遇制度を設けました。その甲斐あって、ついに2015年の国勢調査で5万人を突破したのです

那珂川町には田園風景や田畑が多く残り、ここでとれた野菜やお米はきれいな水と空気で育つため美味しいと評判です。わざわざ福岡市から買いに足を運ぶ人もいるのだとか。そんな自然と都市が調和した町ということも、人口増加の理由の一つなのでしょう。

那珂川町が市になることによって住民福祉の向上や対外的な注目度が高まり、さらなる産業が生まれることは確実です。300円新幹線は、那珂川町の活性化にここまで恩恵をもたらしたのです。

那珂川町への移住促進プロジェクトはまだまだ続く

那珂川町の北部一帯は、博多南線の恩恵を受けて今でも人口が増加しています。その反面、南部の南畑地区との格差が悩みの種になっています。そこで「SUMITSUKE那珂川」という南畑地域への移住をサポートするプロジェクトが2016年から始動しました。

「SUMITSUKE那珂川」は、里山暮らしに憧れているけれど、難しそうだという方と南畑地区とをつなぎ、移住の敷居を下げるプロジェクトです。田舎暮らしのリアルな姿を紹介し、地域の方との関係作りをサポートしてくれるプログラムが用意されています。その一つ「空き家バンク」では、個性的な南畑地区の住宅物件を、暮らしに役立つコラムと合わせて紹介するなどの活動をしています。

新幹線は町を変えた

新幹線の開通をきっかけに、大きな発展をとげた那珂川町は今も変化を続けています。

那珂川町は、今後も人口のさらなる増加が予想され、地価も上昇傾向にあります。新幹線の力がなければ、こんな未来は誰が予想できたでしょうか。那珂川町はみんなで一つになって、どんどん前進していくでしょう。


(提供:JIMOTOZINE)