東京株式市場では力強い動きが続いています。日経平均株価は10/2(月)から10/20(金)まで、56年9ヵ月ぶりとなる「14営業日続伸」(過去最長とタイ記録)となり、21,457円64銭まで上昇しました。これは1996/10/18に付けた21,612円30銭以来の高値水準となります。世界経済が順調に拡大し、株価が世界的に上昇する中、地政学的リスクが一時に比べ後退し、好調な企業業績が評価されやすい投資環境になっているようです。

こうした中、個別銘柄レベルでも大きく上昇した銘柄が目立ってきています。日経平均株価が当面の安値を付けた9/8(金)から10/19(木)まで、東証一部の主力銘柄(ここでは時価総額1,000億円以上の銘柄を指すことにします)763銘柄のうち、34銘柄が20%超上昇し、213銘柄が日経平均株価の上昇率(11.3%)を上回っています。これら、東京株式市場の上昇をけん引した銘柄が今後も「主役」を継続する可能性も十分ありそうです。

反面、今後も株式相場の上昇基調が続くと考えるならば、循環物色により、「出遅れ銘柄」が注目される局面になると考えることも可能です。そこで今回の「日本株投資戦略」では、「出遅れ銘柄」について考え、その候補銘柄をスクリーニングにより、抽出してみました。

出遅れ銘柄を探る

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(写真=PIXTA)

それではさっそく、今後投資家の関心が強まりそうな「出遅れ銘柄」について、スクリーニングを行い、抽出を試みてみたいと思います。スクリーニング条件は以下の通りです。

(1)時価総額1,000億円以上の東証1部上場銘柄であること
(2)9/8(金)から10/19(木)までの株価上昇率が5%以上で、かつ同期間の日経平均株価上昇率(+11.3%)未満であること
(3)2人以上のアナリストが業績予想を公表している銘柄であること
(4)今期の予想営業利益について、市場コンセンサスが会社予想を上回っていること
(5)今期予想純利益(市場コンセンサス)が黒字予想であること
(6)今期予想EPS(市場コンセンサス)が過去4週間に増加している銘柄であること
(7)今期予想PERが20倍未満であること

冒頭でご説明したように、9/8(金)は日経平均株価の終値が19,274円82銭と当面の安値を付けた日になっています。そこを起点に10/19(木)まで、同平均株価の上昇率は11.3%となりました。

今回は「出遅れ銘柄」を抽出することが目的ですので、全体的に株価が上昇している時に、指数よりもパフォーマンスが悪い銘柄については「出遅れ銘柄」と考えてよいと思われますが、こうした力強い相場の中で株価が逆に下落していたり、ほとんど上昇していないというのも問題含みであるとも考えられます。個別の悪材料が内包されているかもしれません。そこで上昇率の下限として「5%以上」という足切りラインを設けてみました。

もっとも、こうした足切りラインの設定はひとつの考え方に過ぎません。それ未満の上昇率の銘柄の中にも「出遅れ銘柄」が含まれている可能性はあると思います。

なお、時期的には「中間決算」発表直前のタイミングであり、業績修正が増えやすいタイミングでもあります。そこで(3)~(6)の条件を入れることで、業績不振の銘柄を相当回避することができると考えられます。また、(7)の条件を入れることで、割高な水準まで買われてしまった銘柄がなるべく抽出されないようになっています。

業績面で不安が少なく、株価面で出遅れていると考えられる東証1部銘柄(時価総額1千億円以上)

上昇率上位銘柄と出遅れ銘柄

図1:住友化学(4005)・日足
図1:住友化学(4005)・日足

ここでは、9/8(金)~10/19(木)に大きく上昇した銘柄について再吟味し、今後の物色動向についてヒントを探ってみたいと思います。

表2は9/8(金)~10/19(木)の期間に株価が大きく上昇した銘柄(時価総額1千億円以上の東証1部上場銘柄)を羅列したものです。

ペッパーフードサービス <3053> は8/15付で東証2部から同1部に指定替えとなったことに加え、株式分割で買いやすくなり、その後の本格的な上昇につながりました。東芝機械 <6104> はEV(電気自動車向け)の押出成形機が期待されました。また、ジャパンディスプレイ <6740> は、出資先企業が有機ELの量産技術の開発にメドを付けたと報じられ、大幅高となりました。

図2:大成建設(1801)・日足 図1~図2は当社チャートツールを用いてSBI証券が作成 図2:大成建設(1801)・日足
図1~図2は当社チャートツールを用いてSBI証券が作成

このように、表2の銘柄の多くは、個別の明確な好材料があったことや、時流の投資テーマに乗っていたこと等が株価上昇の要因になったと考えられます。市況が「スーパーサイクル」に入ったと期待される半導体関連株が多いのも特徴です。

なお、投資テーマに乗っていると考えられる銘柄としては、表1の「出遅れ銘柄」の中から住友化学 <4005> や宇部興産 <4208> も、リチウムイオン電池や有機EL向けビジネスの成長性が期待されます。この2銘柄についてはSBI証券のWebページで詳細なレポートが掲載されていますので、ご参考頂ければと思います。

株価的には前者の住友化学の場合、9月下旬以降、株価上昇後の一服場面になったことが、この期間における出遅れにつながったと考えられます。

表1には、大成建設 <1801> や鹿島建設 <1812> など建設株も含まれています。上記のような投資テーマから外れていることや、目先調整局面になったことで「出遅れ銘柄」になったとみられます。両銘柄とも、今期の業績予想(会社予想)が営業減益見通しになっているため、一見すると、業績面でも買われにくいかもしれません。ただし、両銘柄とも今年度第1四半期は大幅営業増益となっており、市場予想は会社予想よりも強めになっています。

この他、東武鉄道 <9001> や東京急行電鉄 <9005> もインバウンド関連として見直される余地はあると考えられます。

株価上昇率(9-8~10-19)トップ20銘柄(東証1部 時価総額1千億円以上)

※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。

鈴木英之
SBI証券 投資調査部

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