ドル円予想レンジ112.50-115.20

「全くの白紙であります」-。これは11/1の夜に安倍首相が述べた来年4月任期満了となる日銀黒田総裁の人事に関しての弁だ。しかし、「手腕を信頼し、金融政策は黒田総裁に任せている」とも発言。2%の物価安定目標にはまだ届いてはいないが、筆者は安倍発言で黒田続投の意向を感じた。

黒田続投でも円安加速には疑問

安倍首相は11/1に第4次安倍内閣を発足させた。全閣僚再任と経済最優先で取り組むことを表明し、アベノミクスは再スタートを切った。前出の発言もあるが、筆者が黒田続投の意向を感じた最大の理由は、“失われた20年”での株安を衆院選挙期間中に取り戻したことだ。有権者に“アベノミクス≒円高抑制・デフレ脱却・異次元緩和の効果”を見せつけたのである。永田町関係者からは「自公圧勝の影の功労者」と、些か持ち上げ気味の評価ではあるが、安倍首相が日銀総裁を交代させる可能性は低いのではないか。

一方で筆者は、黒田総裁の不満から、高年齢を理由に辞退する可能性を邪推する。10/31の日銀展望レポート・物価見通しでは、“緩和長期化観測に繋がる下方修正”とし、黒田総裁はその理由に、①企業の成長期待が低いこと、②携帯電話の通信料が大幅に下がったことを挙げた。これらは政治の責任分野であって日銀の責任分野ではないと明言したに等しい。

アベノミクスと言えば、当初は(1)金融緩和、(2)財政政策、(3)成長戦略、となる3本の矢だった。(1)においては、日銀の10月資金供給量(マネタリーベース、月末残高)は9月末から1兆9502億円増の476兆6167億円、5カ月連続で過去最高水準となり、「出口政策」議論は市場をミスリードする、と黒田総裁が反論するなど金融緩和姿勢は堅持されている。しかし、政治はどうか。(2)(3)は頓挫し、日銀が孤軍奮闘しているように映る。安倍首相による今後の経済運営「生産性・人づくり両輪」を否定しないまでも、現策長期化が物価上昇や円安浮揚力に直結すると黒田総裁が信じているとは思えない。

ドル円レートにおいてはドルの利上げ性向に円は水準感を委ね、主体性の無い“dependtrend(依存趨勢)”に陥る可能性が高い。物価上昇、円安浮揚は、まさにドル次第だ。

11/6週ドル円

上値焦点は週足ボリ+2σの114.726、3/15高値114.90。節目の115.00は輸出企業が1ドル115円のコールオプション売りと110円プットオプション買いを組み合わせた「レンジフォワード」の設定上眼となるが、上抜ければ3/14高値115.205、3/10高値115.52を意識。月足雲上限116.094が期待値か。下値焦点は11/1安値113.595、10/31安値112.945。割れると10/20安値112.51、週足一目雲上限112.325維持が問われようか。

為替見通し11-2

武部力也
岡三オンライン証券 投資情報部長兼シニアストラテジスト