レストランや居酒屋のインターネット予約が広まり、大変便利になりました。グルメサイトはもちろん、お店の公式HPやSNSからスマートフォンで予約して、あとは当日お店に行くだけです。しかし、予約が手軽にできることになったこともあるのか、飲食業界では予約のドタキャンや無連絡キャンセルが急増しています。

(写真=PIXTA)
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飲食店の予約キャンセルが社会問題に

インターネット予約は、電話予約のように営業時間を気にすることもありません。空席が表示され、スムーズに予約できるサイトもあります。しかし、予約キャンセルが老舗や有名店にも広がり、深刻な社会問題となっています。一説によると、業界全体の推定損失額はなんと約750億〜2,000億円に達すると見込まれています。

店側としては直前で予約が消えてしまうと、予約人数に合わせて用意した材料や人件費、利益などがなくなるため大変な損失です。

悪質なマナー違反の予約キャンセルに対応するため、飲食業界でも対策は行っています。たとえば、キャンセル料を設定して支払いを徹底したり、複数の飲食店で悪質な予約キャンセルを繰り返す客をブラックリストにして共有して被害を防いだりなどです。ただ、いずれも決定的な解決策にはいたっていません。

有名店の空席が手に入る「ごひいき予約」スタート


こうした飲食業界の問題に対して、新たな対策がスタートしました。それが2017年8月開始の「ごひいき予約」です。三井住友トラストクラブによるダイナースクラブカードの会員向けサービスで、LINEと予約サイトを利用して予約することができます。

「ごひいき予約」のシステムは次の通りです。

  1. 登録店で直前キャンセルが発生
  2. ダイナースクラブがその空席を買い取る
  3. ダイナースクラブ会員向けにLINEで空席発生を告知
  4. 会員はポケットコンシェルジュ(ポケットメニュー社運営)にて空席分の予約をする
  5. 予約と同時にダイナースクラブカードで決済完了

    「ごひいき予約」にはお店、クレジットカード会社、会員の三者の利害が絡んでいます。今回の新サービスはそれぞれのニーズを満たせるシステムなのでしょうか。

    ● 店舗側
    それまで直前キャンセルによる空席で浮いてしまう予約を、ダイナースクラブに通知するだけで損失を取り戻せる機会が大幅に増えます。予約困難な人気店なら当日の告知でも食べに行きたい客は見つかるはずです。

    ● クレジットカード会社側
    予約が極めて難しい「すきやばし次郎」を始めとする老舗店を利用できるかもしれないサービスは、話題性があり宣伝効果も抜群です。会社としては利益よりあくまで飲食業界の問題に少しでも役立てられたら、という社会貢献の姿勢であることがポイントといえます。

    ● 利用者側
    予約できないと思っていた有名店で食事できるかもしれない……という期待が膨らみます。LINEで直前告知されるので、その場で予約決済すれば、一緒に食事する大切な人に夜のディナーを自慢できるかもしれません。

    あくまで社会問題解決への一つのアプローチ


    このシステムにも気になる点はあります。空席を買い取っても転売できないリスクをカード会社は負っていますし、ダイナースクラブ会員しか利用できないというのはサービスとしてまだ限定的です。加盟店も30店舗ほどで(2017年10月23日現在)、京都や大阪では立ち上がったばかりのサービスです。今後、三者のメリットがさらにマッチするよう成熟していくことが期待されます。

    現在、「ぐるなび」や「Yahoo!予約飲食店」では、スマホアプリからリアルタイムの空席状況が表示されるサービスが始まっています。こちらは直前キャンセルによる空席が反映されているというわけではありませんが、サービスの方向性として「ごひいき予約」のような展開への可能性も期待できるかもしれません。

    直前キャンセル急増のおかげで有名店の席を手に入れられるチャンスが広がったことは、皮肉とも言えますが、予約の取りにくい人気店に行けるチャンスがあるなら、ぜひ一度利用してみたいものです。

    (提供:JIMOTOZINE )