ドル円予想レンジ112.50-114.75
「Mr.Ordinary(普通の人)」-。これは米経済紙が評したパウエルFRB理事の横顔だ。11/2に訪日を控えたトランプ大統領はイエレン現議長の継続ではなく、ジェローム・パウエル理事を第16代次期FRB議長に指名した。
普通の人、パウエル氏が次期議長
数多くの候補者が挙げられていたが、何故パウエル氏が次期議長に指名されたのか。9月にトランプ大統領はイエレン議長に対し、「とても尊敬している。彼女が好きだ」と発言。「低金利政策」が好ましいと公言していたトランプ意向と整合性が合致している証左でもあった。しかし、イエレン議長を誕生させたのは民主党・オバマ政権である。
11/7のトランプ・ツイッターでは米国株の最高値更新に対し“Thereis greatconfidenceinthemovesthatmyAdministration(私の政権が作り出している、大きな波への信頼だ)”と自賛している。米国株高の持続と景気の拡大、今後の金融政策の成果は自身の実績と主張するためにも、トランプ大統領選任の新議長が必要だったと読むのが妥当だ。慎重な利上げ思考を覗かせたイエレン議長に近く、現FRB路線の踏襲として市場の動揺も抑制し、共和党色でホワイトハウスの意向も汲んでくれる人物・・。それがパウエル氏だったのだろう。
パウエル議長でドルは上がるのか、下がるのか
では、パウエル議長でドルは上がるのか、下がるのか。注意しておきたいのは、トランプ政権はドル高を望んでいない点だ。パウエル路線が、イエレン体制を踏襲して緩やかな複数回の利上げやバランスシートの縮小を実施すれば、FF金利の上昇がドル高志向を強めることになる。
果たして、パウエル議長は、雇用情勢と物価の安定が明確な際に、その整合性を示す金融政策を示せるのか、政治に忖度しないのか。普通の判断を普通に示せればよいが、独立した金融政策の運営疑念が強まるようだと、市場はドル忌避に転ずる可能性も有り得る。
尚、米利上げ確率を示すシカゴFEDウオッチを見ると、パウエル氏がFRB議長として最初に迎える3/21のFOMC・利上げ確率は37.1%と極めて低い。(11/10時点)
11/13週ドル円
上値焦点は11/9高値114.08、11/7高値114.35、11/6高値114.75。超えれば、3/15高値114.90、節目の115.00、週足ボリ+2σが意識されるだろうがハードルは高そうだ。下値焦点は10/31安値112.945。割れると10/20安値112.51、週足一目雲上限112.325維持が問われる。感謝祭・サンクスギビングデーを翌週に控え、ファンド解約等での調整動意の可能性も一応留意。
武部力也
岡三オンライン証券
投資情報部長兼シニアストラテジスト