ドル円予想レンジ110.00-112.50

「デフレからの脱却を確実なものとしてまいります」-。これは11/17の衆参両院本会議で所信表明演説を行った安倍首相の覚悟である。

安倍首相の姿勢が円を揺さぶるか

11/20の衆院本会議で安倍首相は日銀に対し「物価2%目標の達成に向けて、大胆な金融緩和を着実に推進することを期待する」と述べた。確かに従前から、黒田総裁も2%の物価目標実現までには「なお距離がある」との認識だ。但し、追加金融緩和が必要との声に黒田総裁は「現在のイールドカーブコントロール(長短金利操作)で十分適切なカーブが形成されている」と明言。突っぱねているようにも見えるが、次の一手が見えず、静観せざるをえないジレンマにも映る。

そうしたなかで筆者が円高警戒感を抱いたのは、米感謝祭を控えた11/20の13時半頃だった。1ドル112.00近傍での攻防時、「もはやデフレではない状況を作り出せた」「行き過ぎた円高も是正された」と安倍首相が述べた局面である。

まさに、トランプ政権の米貿易赤字削減姿勢、パウエル次期FRB議長が緩やかな利上げペースを維持するとの見方、加えて米税制改革やロシア疑惑を巡る米政権の先行き不透明感を孕んでいる状況下である。投機筋にしてみれば、円急騰を正当化し、円の売り持ち高解消を進める格好の発言だったのではないか。安倍首相が「デフレ脱却が見えない」と言えば、野党が国会でアベノミクス批判を強め、対して、「デフレ脱却が見えた」と言えば、投機筋は円買戻しとした“前門の虎、後門の狼”状態が、現在の状況と言えようか。

前号でも指摘したが、シカゴIMM通貨先物での投機筋の円売り(ドル買い)ポジションが、11/14時点では13.5万枚と今年の最高水準まで膨張。これは2013年12月以来の高水準だ。安倍首相の覚悟、発言を恣意的に解釈し、円売り持ち高の縮小・円買い戻しの可能性は、12/9までの特別国会審議終了まで継続、と読んでいる。

11/27週ドル円

中期トレンドでは20日線が90・200日線に対しデッドクロス形成を推考させるのが気掛かり。上値焦点は200日線111.70圏越え、週足雲上限112.325、11/22高値112.485、11/20-21高値圏112.72-73。日足一目均衡表雲上限(112.715-113.108)が上値抑制か。

下値焦点は111.00節目、9/18安値110.99。緩やかに切り上がる雲下限(110.713-110.89)注視。下抜けた際は9/15安値109.535。これは北朝鮮の弾道ミサイルが北海道上空を越えた際の「5分間」動意安値でありオーバーシュート感が強いことから節目の110.00圏が実質の最終橋頭堡か。

岡三・武部の週間為替見通し
(画像=岡三オンライン証券)

武部力也
岡三オンライン証券 投資情報部長兼シニアストラテジスト