円高が日本株相場の上値の重荷となっている。一方、為替前提がコンサバティブな銘柄には相対的に買い安心感が高まる。また、ドル・円が上昇に転じる局面がきた場合は感応度の高い企業の株価が反応しやすいため、各社の想定レートや感応度を点検しておきたい。

為替感応度
(画像=PIXTA)

約190社(2、3月期決算)の為替前提をまとめた。下期の平均レートは1ドル=108.8円で、上期平均より3円程度の円高を見通している。

今期下期は前期の下期と比べても3円程度の円高だ。集計対象企業の営業利益(一部経常利益など)の予想は計約8兆3200億円と上期実績(約8兆6500億円)を下回り、前年同期比の成長率も1%と上期(32%)から大幅に縮小する方向だ。通期計画は16兆9700億円(前期比15%増)となっている(通期の為替前提の平均は1ドル=110円前後)。

ただ、足元で強含んでいる円相場が再び下落すれば、状況は変わってくる。対ドルで1円の円安に伴う年間ベースの利益の押し上げ額は計1700億円強、対ユーロでは計400億円近い円安メリットが試算される。

個社ベースでは、ドルの下期前提を1ドル=110円としているケースが多く、集計対象の6割に上った。次いで105円が20%強。100円という円高想定を掲げる企業もわずかながらある。ユーロは125円と130円がそれぞれおよそ四分の一を占める多数派だ。

1ドル=100円を下期の前提に据えているのが、精密ばね大手のアドバネクス(5998)、そして射出成形機トップの日精樹脂工業(6293)だ。

いずれも1円の円安・ドル高に伴う年間営業利益の感応度そのものは2000万円に満たないが、業績対比ではアドバネクスが3%を超え(今3月期通期の連結営業利益予想は4億円、前期比62%増)、日精樹脂(同27億円、前期比7%増)も0.6%と決して小さくない。想定比10円の円安は強い増額修正要素となるだろう。

需給的にはアドバネクスが信用倍率0.4倍と良好だ。PERなどには一見割安感がないものの、この全体相場の調整局面でも高値圏から落ちてこない強さにはそれなりの裏付けがあり、一つが円安メリットだろう。なお、同社は基本的に円建て取引のため、為替の差損益は期中平均ではなく、海外子会社の連結手続きに適用する期末日のレートがよりどころだ。

続いて1ドル=105円。主力級はコマツ(6301)、日立建機(6305)の建機2社が感応度および業績影響度の大きさで目立つ。ただ、バリュエーションの調整局面に入った可能性があり、目先は株価の落ち着きどころを見極めたい。一方、日本電産(6594)やローム(6963)は円安時には株価が素直に好反応を示す可能性が高い。

105円組の中・小型株で、円安の好インパクトが特に大きいのは近畿車輌(7122)。「(対ドル1円変動につき)年間2億円程度の利益影響が出る」という。今3月期の連結営業損益(10億円の黒字見通し、前期は142億円の赤字)は、1円円安・ドル高にフレるだけで20%押し上げられる計算となる。

1ドル=113円弱で推移した近畿車の上期の営業利益は31億円(前年同期は115億円の赤字)。通期予想を大きく上回りながらも増額修正に至っていないのは、時価と比べて保守的な下期の為替前提が一因だ。会社側は下期の計画について上期比で円高による14億円の減益影響を織り込んでいる。仮にこれがなくなれば、業績は様変わりするだろう。1倍を割り込むPBR(株価純資産倍率)はがぜん割安感が強まる。

このほか、印刷機の小森コーポレーション(6349)やFDK(6955・(2))も1ドル=105円前提の銘柄の中では利益規模に対する為替感応度が大きく、円安による業績予想の上方修正が期待される。

塗装機器のアネスト岩田(6381)は、ドル、ユーロの感応度の会社試算は微小(年間経常利益に対し1円円安で各1500万円プラス)だが、実際の増益効果は想定超となる傾向がある点は注目だ。(11月30日株式新聞掲載記事)

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