終身雇用、退職金、年金制度に期待できず、老後に不安を抱えている人は多いのではないでしょうか。自分で何とか考えなければと思っていても、何をどこから手をつければよいのか、最初の一歩を踏み出せずにいる人も多いでしょう。

最初の一歩を踏み出すためには、考え方を整理する必要があります。今、老後に向けた人生設計において何が問題で、どういった方向性で対策を取るべきなのか、考えてみましょう。

人生設計は自己責任の時代

Life Planning
(写真=Adha Ghazali/Shutterstock.com)

国の作った制度や会社の退職金を頼りに働き続け、老後の生活を迎えるという人生設計は、もはや古いと言わざるを得ません。今や人生設計は自己責任の時代であり、個人の戦略が何より重要になっています。理由は三つあります。

第一に、人々のライフプランが多様化しています。高度経済成長期であれば、「高校ないし大学卒業後に大企業に就職、20代後半で結婚、そのまま定年まで勤め上げ10年弱の老後を退職金と年金で豊かに過ごす」というのが最も望ましいライフプランでした。

しかし、今ではそうした画一的なライフプランが自分の人生に当てはまらない人も多いはずです。転職や会社の倒産などを経験する人も多く、生涯一社で勤め上げる人の方が珍しいかもしれません。

第二に、退職金に期待することができません。かつては、数十年勤め上げた人に、数千万円の退職金が支給されることもありました。退職後の老後の期間も平均で10年ほどと短く、数千万円もの退職金があれば豊かに過ごせた時代です。

しかし、今では転職が一般的になり、一社の在籍期間が短くなった結果、大企業でも退職金がそれほど出ないケースもあります。また、平均寿命が伸びたことで退職後の人生が長くなり、退職金だけで豊かな老後を過ごすことは難しくなっています。

第三に、年金にも頼れません。年金制度の継続が難しいことは、すでに多くの方が感じていることでしょう。高度経済成長期に作られた年金制度は、現在のような少子高齢化の時代を想定したものではありませんでした。支える側の労働者人口が減少し、支えられる側の高齢者が増え続けている以上、遅かれ早かれ年金制度は機能しなくなる、あるいは縮小すると考えておくべきです。

このように、終身雇用制度や退職金、年金といった仕組みに個人が頼れなくなった現代では、人生設計は個人が自分の責任において考える必要があります。個人は、将来を見据えて戦略的に動かなければならないのです。

長引く老後、増える下流老人

現役時代に戦略的に動くことなく老後を迎え、貧しい生活を送る「下流老人」という言葉が一般的になりました。本来、高齢者世帯の資産は他の世代に比べて多いものです。総務省統計局の家計調査でも、ほぼ毎年60~69歳世帯や70歳以上の世帯の貯蓄高がトップとなっています。

一方で、高齢者世帯の「相対的貧困率」が高いことも統計データから明らかになっています。OECDのレポートによると、2013年時点で日本の相対的貧困率は19.4%となっており、OECD平均の12.8%に比べると比較的高い値にあることが分かります。平均すると資産がたくさんあるように見えても、その中には貧困リスクを抱える層が確実にいるということです。

資産を持つ高齢者でも、中身は退職金や過去の預貯金というケースが少なくないでしょう。バブルの時代には、定期預金の金利が6%を超えることもあったほどで、銀行に預けているだけで12年で預金が2倍になる計算です。この時代はリスクの高い金融商品に手を出さず、銀行に預けているだけの人でも資産を形成できたのです。

このように、国や会社も個人を守ってはくれず、銀行の金利も期待できない時代では、下流老人はますます増えていくことが予想されます。特に、自分で考えず流されるままに生きている人は、下流老人の予備軍になってしまう可能性があります。

個人の価値を戦略的に構築する時代

自己責任で人生設計を考えるとき、まずは自分自身の価値を高めることを考えるべきです。具体的には、会社の名前で仕事をするだけではなく、個人としても顧客に価値を提供し、対価を受け取れるようなプロフェッショナルなスキルを身につけることが重要です。

その意味で、若いうちは企業の規模ではなく、長い目で見て自分の価値を高められるような就職先を選ぶことが大切です。仕事を通じて自分のスキルアップやノウハウの吸収、経験を積むことを強く意識しましょう。自分の人生を長く支えてくれるのは、当座の給料よりも身に着けた経験やスキルなのです。

資産運用で戦略的に資産を守る・増やす

もう一つ、若いうちから長期的な視点で資産運用に取り組むことをおすすめします。銀行に預けるだけでは、ほとんど預金は増えません。お金を眠らせるよりも、資産運用に回して「お金にお金を稼いでもらう」ことが理想です。

これは、不労所得を得て働かなくても暮らせることが理想である、という意味ではありません。投資は短期では大きなリターンが見込めなかったとしても、時間を味方につけ、長期で運用した時に気づけば大きな成果になっているケースがあります。低リスクで着実にリターンを生むような投資を勉強し、月に数万円でも得られるようにすれば、気持ちに余裕と安定が生まれます。

数年や数十年という長い目で資産を育てる意識を持ちましょう。基本は労働収入で生活を賄い、プラスアルファとして資産運用による収入を得る、という状態がこれからの人生には必要な考え方になってくることでしょう。(提供:Incomepress

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