事業の内容を変更せずに事業を法人化させる法人成り。個人事業主のときよりも金銭的なメリットが得られる可能性が高いため、法人化の手続きを検討している人もいるのではないでしょうか。

今回は消費税にスポットを当て、法人成りをすることで得られるメリットについて詳しく見ていきます。

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(写真=PIXTA)

消費税の免税事業者

現在消費税は8%ですが、2019年には10%まで引き上げられる予定です。消費税は消費者ではあれば誰でも課せられますが、10%ともなると負担も大きくなります。個人事業主や法人も当然取引先から受け取った消費税を後日まとめて納税する必要があります。

しかし、法人成りした場合、特殊なケースを除いて消費税が2年間免除されます。また、その間消費税を取引先から回収してはいけないという規定もありません。つまり、消費税として取引先から受け取った金額を納税せずに自社の利益としてしまってよい、ということになります。これは法人によってはかなり大きな節税となります。

消費税の納税は、法人なら2年前のものを、個人なら暦年の2年前のものを納めることとなっています。つまり、法人化した年と翌年から見ると2年前はいずれも法人化していない時期にあたります。したがって、法人成りした最初の2年は消費税を納める必要がないというわけです。

免税事業者の要件

免税事業者として消費税を納めなくてよい場合の要件を具体的に見ていきましょう。免税事業者となる要件は「法人なら2年前の、個人なら暦年の2年前の課税売上高が1,000万円以下であること」です(消費税法第9条第1項「小規模事業者に関わる納税義務の免除」)。消費税法上、納税義務は常に前々事業年度の実績(基準期間)によって判断します。

したがって、その年の課税売上高が1,000万円を超えていても、2年前の課税売上が1,000万円に達していない場合にはその年は消費税の納税が免除されます。そして、その2年後には基準期間に1,000万円を超える課税売上高があったとして、納税義務が発生します。法人成りしたケースの場合は、そもそも2年間の基準期間自体がないため納税義務が免除されることになります。3年目以降は基準期間の課税売上高が1,000万円以下かどうかで消費税が免税されるかどうかが決定します。

免税事業者にならないほうがいいケースも

免税事業者になれば、消費税を支払わなくていいどころか取引先から回収した消費税を売り上げの一部にできるわけなので、一見良いことばかりのように思えます。しかし、事業者によっては課税事業者でいる方がお得なケースもあります。消費税の申告を行っている課税事業者の場合は消費税の還付を受けることができますが、免税事業者は消費税を納税していないため還付を受け取ることができません。

支払った消費税が受け取った消費税よりも大きかった場合、免税事業者だと本来戻ってくるはずの還付が受け取れないため、結果的には損をすることになります。

なお、基準期間の課税売上高が1,000万円以下のため免税事業者に当てはまる場合でも「消費税課税事業者選択届出書」を提出すれば課税事業者となることができます。したがって、事業の一環として高額な機材を購入するなど多額の消費税を納める予定がある時には、消費税課税事業者選択届出書を提出して消費税の還付を受けられるように調整することで損をせずに済むことになります。

個人事業主期間と併せると4年間免除されることも

消費者の免税事業の項目で少し触れましたが、個人事業主も事業開始後最初の2年間は消費税が免除されています。つまり、個人事業主として2年事業を行った後に法人成りによって事業を法人化すれば、合わせて4年間消費税を納めなくても良いことになっています。これは消費税法上正式な権利です。

将来事業の法人成りを視野に入れている個人事業主は、ぜひ検討してみてはいかがでしょうか。(提供:ビジネスサポーターズオンライン)