中小企業の事業承継には、承継する際の税負担の問題などさまざまな課題がある。こうした中小企業の事業承継をスムーズにするべく、「中小企業経営承継円滑化法」が制定され、税制においても事業承継税制が設けられた。今回は、この事業承継税制の活用について見ていこう。

事業承継税制:相続税・贈与税の納税を5年にわたり8割~全額猶予

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(写真=turgaygundogdu/Shutterstock.com)

事業承継税制は「平成21年度税制改正」で創設された。中小企業の後継者が、現経営者から会社の株式を承継する際に、相続税・贈与税が軽減される制度だ。相続分については80%、贈与は100%全額、5年間にわたって納税猶予が受けられる。

経営者が亡くなった後、自社株を相続した後継者には、相続税の負担が重くのしかかる。こうした負担を軽減するために、上場株を除く自社株を相続した場合、一定の割合の株式に対し、その80%に対応する相続税が納税猶予される。

後継者が死亡したときや、後継者がその次の後継者(3代目)に贈与した場合には、猶予されていた納税分が免除される。また、上場株を除く自社株を贈与された場合にも、一定の要件のもとで贈与税の納税が猶予される。ただ、贈与前からの保有分も含めて、保有株式が発行済株式総数の2/3を超えた場合は、超過分について特例は適用されない。

事業承継税制を適用するときのリスクと改正点

事業承継税制で優遇を受けていた場合も、適用条件から外れてしまえば納税しなければならないリスクがあった。しかし、平成25年と平成29年の税制改正で事業承継税制の拡充が図られたことで、ずいぶん利用しやすくなったといえよう。主な改正点は以下となる。

その1:手続きの簡素化
平成25年以前は、制度利用の前に経済産業大臣の「事前確認」を受ける必要があったが、平成25年以降はその必要がなくなり、手続きの煩雑さが軽減された。

その2:親族外承継の対象化
現経営者の親族以外が後継者となる場合でも、事業承継税制で優遇が受けられることとなった。これにより、後継者難に悩む中小企業の後継者選びの選択肢が広がった。

その3:雇用確保要件の要件緩和
事業継承税制を利用する際のリスクとして、「8割の雇用維持」が求められるという点がある。例えば、従業員4人の企業の場合、1人が退職してしまえば80%を下回ってしまう。ただ、雇用は会社都合だけでなく従業員本人の意思や都合もあるため、納税猶予打ち切りの最大のネックとされていた。

平成25年の改正では、景気変動に配慮し、「雇用の8割以上を5年間毎年維持」から「5年間の平均で80%を維持する」というように基準が緩和された。さらに、平成29年には「相続、もしくは贈与時の常時従業員数に80%をかけて端数が生じた場合、切り捨てた人数と比較する」というように改正されている。

例えば、従業員4人の会社であれば8割の人数とは3.2人となるが、端数は切り捨てるので3人いればOKとなる。つまり、5人以下の会社なら1人辞めても猶予打ち切りにはならないということだ。また、災害が発生した場合や取引先が倒産した場合などに配慮して、雇用条件について臨機応変に対応していく「セーフティネット規定」も設けられている。

その4:相続時精算課税制度を適用
平成29年の改正では、相続時精算課税制度の適用が可能になった。納税猶予を受けた株式について相続時精算課税制度が適用されれば、20%の相続税税率以上には課税されないということになり、リスクが限定化される。

特例活用で後継者の負担減

経済産業省の「2017年版 中小企業白書・小規模企業白書」によると、後継者の税負担が事業継承のネックと感じる人は64%にも上る。これからもっと事業継承がクローズアップされることにより、この数字の背景にある後継者の負担は浮き彫りになるだろう。

事業承継税制を活用すれば、後継者の税負担を軽くすることができ、事業承継はよりスムーズなものになることが期待される。(提供:百計オンライン

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