企業の経営では、利益より実際に動いたキャッシュを重視する考え方があります。キャッシュ・フロー計算書とは、キャッシュの流れを一会計期間で表したものであり、キャッシュの増減を確認することが可能です。キャッシュ・フロー計算書に関する知識を深め、企業経営を成功へ導いていきましょう。

キャッシュ・フロー計算書とは

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(画像=13_Phunkod/Shutterstock.com)

事業活動によって企業に入ってくるお金のことを「キャッシュ・イン・フロー」、出て行くお金のことを「キャッシュ・アウト・フロー」と呼びます。また、お金の流れ全体を「キャッシュ・フロー」と表現します。さらに、手元に残った余剰資金は「フリー・キャッシュ・フロー」と呼びます。

キャッシュ・フロー計算書とは、企業などにおけるお金の流れを把握するために作成する表のことです。利益などの指標と比較すると客観性や信用性が高く、内容を検討することで資金繰りの状況を把握することが可能となります。

営業活動、投資活動、財務活動と区分されており、それぞれの事業活動によって生じたキャッシュ・フローが記載されています。

・営業活動
会社の本業である営業活動が利益を上げているか確認することができ、プラスであるほど評価は高い
・投資活動
企業の発展に向けてどの部分に投資しているかを確認することができ、マイナスであるほど健全と評価
・財務活動
資金調達の現状や株主への配当などを確認することができ、プラスであれば資金が不足している状態

損益計算書の残高との違いは?

キャッシュ・フロー計算書と混同されがちな書類に、損益計算書があります。計上するタイミングが大きく異なります。キャッシュ・フロー計算書では実際に企業にキャッシュ・イン、キャッシュ・アウトした時点で計上されますが、損益計算書では実際にキャッシュが動いていないとしても、帳簿上で利益が上がった段階で計上することができます。

つまり、売り上げが小切手や手形として支払われた場合などは、キャッシュがゼロであっても利益として損益計算書に記載されることになります。また、損益計算書では算出方法によって数字が変わるため、恣意的な操作を加えやすく、キャッシュ・フロー計算書より客観性が落ちる傾向にあります。たとえば、損益計算書にある営業利益では、給料手当の計上金額を操作することで、比較的簡単に利益を調整することが可能です。

手元にキャッシュが残っていなければ、たとえ利益は黒字であっても、支払いに対応できずに倒産してしまう可能性もあります。そのため、企業経営においては利益を示す損益計算書ではなく、キャッシュ・フロー計算書が重要視される傾向が強くなっているといえるでしょう。

キャッシュ・フローの計算方法

キャッシュ・フローは、ある期間におけるキャッシュ・インからキャッシュ・アウトを引くことで算出することができます。具体的な企業におけるキャッシュ・フロー計算書を作成するために必要な計算式は、以下の通りです。

  1. 簡易キャッシュ・フロー = 当期利益 + 減価償却費 + 引当金増加額
  2. 営業キャッシュ・フロー = 1 - 売掛債権増加額 - 棚卸資産増加額 + 買掛債務増加額
  3. 投資キャッシュ・フロー = 投資支出額 = 前期固定資産残高 -(当期固定資産残高+当期減価償却額)
  4. 財務キャッシュ・フロー = 新規借入額 - 返済額
  5. フリー・キャッシュ・フロー = 2 ± 3

キャッシュ・フロー計算書を作成するためには、以下の書類が必要となります。

・ 前期の貸借対照表
・ 当期の貸借対照表
・ 当期の損益計算書
・ 固定資産の取得や譲渡に関する資料
・ 有価証券の取得や譲渡に関する資料
・ 新株の発行に関する資料

計算方法としては、直接法と間接法の2種類存在し、直接法では取引ごとにキャッシュ・フローを計算するのに対して、間接法は損益計算書で求めた前期の純利益から項目ごとに加減することで算出することになります。多くの企業では間接法が採用されています。

フリー・キャッシュ・フローは経営状態を反映

企業にとって重要なポイントは利益ではなく手元に残ったキャッシュです。そのことを考慮すると、フリー・キャッシュ・フローは企業の経営状態を反映する指標ということがわかります。

また、実際に動いたキャッシュは帳簿上で操作しにくいこともあり、計算書の信頼性も高く評価されています。ぜひ、キャッシュ・フロー計算書を重視した見方や経営方法を身につけましょう。(提供:ビジネスサポーターズオンライン)