企業にとって利益の追求は欠かせない要素ですが、たとえ大幅な黒字であっても経営状況は良くない場合もあります。そこで、より客観的に判断するためキャッシュ・フローという指標が存在します。特に、キャッシュ・フローの計算によって確認できる「フリーキャッシュフロー」は企業経営においてさまざまな選択肢を与えてくれます。それぞれの言葉の意味や該当する具体例について紹介します。

キャッシュ・フローとは

CASH FLOW
(画像=yanatul/Shutterstock.com)

キャッシュ・フローとは現金の流動性を示す指標です。企業が、ある期間で経営活動を行った際の流入と流出の現金の差を計算することによって算出されます。利益などの指標とは違い、実際に現金が動いた際に計上されるため、手元に残る現金や企業の健全性、資金繰りの状況の客観的な把握などに利用されています。

また、企業経営ではたとえ黒字だったとしても、キャッシュが不足し支払いが間に合わずに倒産するといったケースが珍しくありません。キャッシュ・フローをより重要視する傾向が高まったことから、自由に使えるキャッシュの量で経営状況を判断するキャッシュ・フロー経営を進める企業も存在します。

自由に使えるキャッシュはフリーキャッシュフローと呼ばれ、その量が多いほど投資や財務構造の改善、株主への還元など経営戦略としての選択肢を大きく広げることになります。また、たとえ利益が赤字であったとしてもキャッシュさえあれば即座に倒産することはなく、さまざまな対策や救命措置を施すことも可能となります。

キャッシュインとは

キャッシュインとは、キャッシュ・フローの一部で資金の流入量を表します。たとえば、以下のような項目は企業に流入した資金となるため、すべてキャッシュインに該当します。

・ 売上代金の回収
・ 株主からの出資金の増加
・ 銀行などからの新規借入
・ 預金利息の受け取り
・ 保険金の受け取り
・ 不採算部門の売却

キャッシュインには、売上代金など事業活動によって得た資金だけではなく、増資や借入などあらゆる流入資金が該当します。一般的に、キャッシュインはキャッシュアウトより多くなるように経営を行う必要があります。

ただし、キャッシュアウトとの差によって経営状況を把握する必要があるため、キャッシュインの値が大きいからといって、経営状況がいいとは限りません。

また、たとえ取引が成立して利益として計上できたとしても、実際に資金を回収できなければキャッシュインとして計上することはできません。キャッシュインは早く受け取り、キャッシュアウトは遅く出すことで、フリーキャッシュフローを多く残すことが可能となります。

キャッシュアウトとは

キャッシュアウトとは、キャッシュインとは反対で資金の流出量を表します。たとえば、以下のような項目は企業から流出した資金となるため、すべてキャッシュアウトに該当します。

・ 商品の仕入れや賃借料の支払い
・ 従業員の給料の支払い
・ 不動産などの購入代金の支払い
・ 借入金や利息の返済
・ 配当金の支払い
・ 税金の支払い

キャッシュインと同様に、あらゆる流出資金がキャッシュアウトとして計上されることになります。フリーキャッシュフローを多く残すためには、キャッシュアウトを低く抑えるという方法が考えられます。

特に固定費の場合、家賃や光熱費、人件費などの削減や事業の一部を外注するといったプランが挙げられますが、実行することでキャッシュインにマイナスの影響がでないか、よく考慮しておく必要があります。

企業経営におけるキャッシュ・フローの意味とは

「利益は意見、キャッシュは現実」という言葉が存在するほど、キャッシュ・フローは経営にとって客観性が高い指標です。ただし、健全な経営を行うためにも俯瞰的な視点が必要になってきます。たとえば、キャッシュアウトを減らすために人件費を削ってしまっては、従業員の意欲が低下し、キャッシュインも減少する可能性が高まります。つまり、経営にはキャッシュ・フローを総合的に判断する能力が求められるといえるでしょう。(提供:ビジネスサポーターズオンライン)