企業経営を続けていれば、不況のあおりを受けるなど経営環境の悪化により、一時的に資金繰りが苦しくなることもあります。そのようなときに、業況が回復するまで資金的なバックアップをしてくれる強い味方が「経営環境変化対応資金」です。以下では、その概要と活用のポイントを解説します。

日本政策金融公庫の経営環境変化対応資金

bulb lamp.
(写真=n_defender/Shutterstock.com)

経営環境変化対応資金は、「セーフティネット貸付」とも呼ばれ、社会的、経済的な環境の変化により、一時的に業況の悪化をきたしている企業の経営基盤の強化を図るための融資制度です。

「晴れた日に傘を貸し、雨の日に傘を取り上げる」という例えのごとく、通常の銀行融資では業績が好調なほど審査も通りやすいといえます。しかし、経営環境変化対応資金は、業績が悪化したときに融資を行うものであり、むしろ売上の減少などが要件となっています。公的な性格を有する日本政策金融公庫ならではの融資制度といえるでしょう。

融資限度額は、国民生活事業の場合、4,800万円までとなっており、一定規模の資金需要も満たします。融資期間も設備資金なら15年以内、運転資金なら8年以内で、それぞれ3年以内の据置期間が設けられるため、資金繰りにも余裕が生まれやすいのが特徴です。

金利は、基準金利をもとにして、要件に応じてマイナス0.5%から0.8%程度の優遇があります。基準金利は近年低い水準にあり、たとえば、無担保の貸付でも1.81%から2.40%となっています。もっとも、金利は融資金額、融資期間、債務者の状況などから決定されるため、ひとつの目安とお考えください。

経営環境変化対応資金は誰でも利用できるわけではない

それでは、経営環境変化対応資金を借りるための条件を確認してみましょう。この制度の対象者は、基本的には、社会的、経済的環境の変化など外的な要因で一時的に売上が減少しているような経営者です。つまり、中長期的には業績回復が見込まれることを想定しています。

具体的には、最近の決算期における売上高が前期または前々期から5%以上減少している場合や、直近3ヵ月の売上高が前年同期または前々年同期に比べて減少しており、今後も減少が見込まれる場合などいくつかの類型が定められています。

日本政策金融公庫は、前身の国民生活金融公庫、中小企業金融公庫、農林漁業金融公庫が統合されて2008年に設立された政府系金融機関です。そのため、同じ「経営環境変化対応資金」といっても、国民生活事業として提供される場合と中小企業事業として提供される場合があります。また、それぞれについて、条件の異なるいくつかのタイプが設けられています。

したがって、自身が融資の要件を満たしているか、また、どのような融資条件になるかについては、日本政策金融公庫の窓口に気軽に相談してみるのが一番です。仮に「経営環境変化対応資金」以外の制度が適している場合には、そのようなアドバイスもしてもらえます。

売上減少企業に有利な資金だが、売上が向上しない場合には?

経営環境変化対応資金は、条件も有利であり、売上が減少傾向にある企業にとっては心強い制度ではありますが、有利子負債であることには変わりありません。

経営分析指標の中に有利子負債月商倍率というものがあります。これは有利子負債の金額を月商で除した値で、一般的には3倍以内が適正と言われています。有利子負債への依存度が高くなると、元利金の返済によって経営がより苦しくなることもあるため、悪化した経営状態がいつ回復するのか、将来の資金繰り計画まで立ててから利用することが重要です。

収支計画や経営を改善するための計画作りには、経済産業省が認定する経営革新等支援機関(認定支援機関)のサポートを受けることも有用です。こうした収支計画や経営計画に基づいて融資の申請を行うことで審査上も有利になるため、これまでの決算内容と今後の事業展開について自身でもよく整理しておいた方がいいでしょう。(提供:ビジネスサポーターズオンライン)