上場企業は決算書を公表しなければならないため、会計ルールが定められています。一方、中小企業にはそのようなルールがありませんでした。しかし、適切な方法で作成した決算書があれば信用力が増し、融資の申込みや新規取引の際に有利に働く可能性もあります。

そこで、中小企業庁が2012年に策定したのが、「中小企業の会計に関する基本要領(中小会計要領)」です。

「中小企業の会計に関する基本要領(中小会計要領)」とは

Accounting
(写真=Zadorozhnyi Viktor/Shutterstock.com)

中小会計要領は、中小企業の実態を元にして考えられた会計ルールです。そのルールに従って決算書を作ることを強制するものではありませんが、中小企業が戦略的に競争力を高めるために必要な「財務的な強さ」を高めることを目的として作られたルールです。

日本の中小企業には、優れた技術やノウハウを持つ企業も少なくありません。しかし、決算書などを通して会社の強さや将来性を伝えることができずに、資金調達に苦労することが多いのが実情です。正しい会計ルールに則り、会社の財務状況を正しく伝えることができれば、経営状態について銀行や取引先などの利害関係者の判断を正しく仰ぐことができます。

その結果として会社の強さを正しく伝えることができ、資金調達力の強化につながります。金融機関からの融資を受けやすく、取引先からの信用を得やすくすることができれば、会社の成長につながっていくのです。

どのような会計処理をするべきなのかは、簡単に理解することはできません。日々、忙しくしている経営者が、その内容を全て理解するのは至難の業です。しかし、税理士などの外部の専門家の力を借りながら適切な決算書を作ることができれば、会社の経営状況をより正確に把握することができます。

中小会計要領を導入していると受けられる優遇制度

中小会計要領の導入を推進するため、この要領を導入している中小企業に対して優遇制度が設けられています。

多くの中小企業が活用している日本政策金融公庫から融資を受ける際に、優遇が受けられます。中小会計要領を利用して事業計画書を策定した場合、中小企業経営力強化資金(中小企業事業)を基準利率で融資が受けられます。

さらに、事業計画書に「当面6ヵ月程度の資金繰り予定表」と「部門別収支状況表」が含まれていれば、さらにマイナス0.4%の金利優遇が受けられます。また、中小企業経営力強化資金(国民生活事業)の場合は、中小会計要領の利用でマイナス0.1%の金利優遇が受けられます。

なお、全国一律の信用保証協会の信用保証率割引制度については、2017年3月31日で取り扱いが終了となりました。現在は、各都道府県の信用保証協会が独自の判断で割引制度を実施していますので、管轄の信用保証協会に問い合わせをしてください。

例えば、東京信用保証協会では、「会計参与を設置している旨の登記を行った事項を示す書類」と「公認会計士または監査法人の監査を受けたことを示す監査報告書の写し」を提出することで、0.1%の保証料率割引が受けられます。

融資を受けても、金利の支払いに追われてしまうようでは会社を成長させることはできません。その金利で優遇が受けられるのは、中小企業にとって大きなメリットです。

中小会計要領に基づく会計を行うには

中小会計要領には、専門家でなければ理解が難しいルールが細かく定められています。しかし、税理士や公認会計士に「中小会計要領に基づいた決算書を作りたい」と依頼すれば、対応してもらうことができます。その際、中小会計要領について、いろいろと質問してみましょう。

専門家でない人にでも分りやすく解説することができる専門家であれば、決算書の作成だけでなく、適切な経営アドバイスをしてもらえる可能性もあるでしょう。その上で、要領に従った決算書を使って正しい経営判断を行い、会社を成長させられるように努めましょう。(提供:ビジネスサポーターズオンライン)