400万社近くある日本の会社のうち、実に99%以上を中小企業が占めています。「日本経済を支えているのは中小企業」と言っても過言ではありません。このように重要な経済主体である中小企業に対して、政府も制度面でさまざまな支援を行っています。

そうした支援策の中でも、中小企業税制はとりわけ影響力のある施策といえます。今回は、中小企業税制の概要と具体的な税制項目を解説していきます。

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(写真=Lemau Studio/Shutterstock.com)

中小企業税制とはどのようなものか

中小企業税制は、中小企業に対して、損金にできる範囲を広くしたり、一定の場合に税額を控除したりするなどの特例を定めた制度です。中小企業税制の対象となるのは、基本的に、資本金が1億円以下の「中小法人」です。ただし、大法人の100%子会社は対象外とするなど一定の例外が設けられています。

税制というと、苦手意識を持っている人も多いかもしれませんが、中小企業の会計は基本的に税法に適した方法で処理されています。「得意先との飲食費は経費にする」など普段何気なく行っている会計処理も、実は中小企業税制に則ったものなのです。

「法人税の軽減税率」や「交際費の損金算入」などの制度がある

それでは、代表的な中小企業税制を紹介しましょう。1つ目は「法人税の軽減税率」です。現在、法人税の税率は原則として23.4%となっています。しかし、中小法人では、年に800万円までの所得金額に対しては税率が15%となります。所得金額というのは、売上ではなく、収益に相当するものですから、規模の小さい企業では、この軽減税率の影響は大きいといえます。

なお、この15%という税率は2019年3月31日までに開始する事業年度に適用されるものです。法人税の軽減税率に限らず、優遇策などの特例措置は、毎年行われる税制改正で頻繁に延長や廃止、内容の変更が行われているので注意が必要です。

次に「交際費の損金算入」を紹介します。交際費は経費になるというイメージが一般的だと思いますが、現在、大企業では原則として交際費の全額が損金不算入という扱いになっています。つまり、交際費を使っても税金は安くなりません。これに対して、中小法人では年に800万円までの交際費支出であれば損金に算入できます。

交際費というのは、「得意先や仕入先その他事業に関係のある者に対する接待、供応、慰安、贈答などの行為のために支出する費用」を指します。つまり、飲食費だけでなく、中元や歳暮、冠婚葬祭に際して金品を渡したというような支出も含まれます。

なお、中小法人か大法人かを問わず、交際費のうち、得意先などとの飲食で支出した「接待飲食費」については50%までが損金になるという制度もあります。こちらは金額の上限が定められていません。中小法人では、年800万円までの損金算入か接待飲食費の50%の損金算入か、いずれか有利な方を選択すれば良いことになります。中小法人にとっては使い勝手の良い制度といえるでしょう。

その他にもいろいろある優遇税制

上記で紹介した「法人税の軽減税率」や「交際費の損金算入」以外にも多くの優遇税制があります。例えば、一定の設備を購入した場合に即時償却をしたり、取得価額の一定割合を税額控除したりできる「中小企業経営強化税制」や「中小企業投資促進税制」があります。

また、従業員を増加することで一定の税額控除が受けられる「雇用促進税制」においても、中小企業の場合は雇用増加者数の要件が5人から2人に緩和されています。

このような中小企業税制を活用することで、節税しながらも将来の事業拡大につながる投資を行うことができます。優遇される税制は積極的に活用していきましょう。(提供:ビジネスサポーターズオンライン)