会社が倒産してしまう理由は何でしょうか。これは端的に言うと、お金が回らなくなるからです。いくら業績が悪くても、融資を受けることができて、お金が回っている状態では倒産することはありません。
つまり、自身のビジネスの収支を把握しておくことは非常に大切だということです。今回は、お金がうまく回っているのかどうかを知るのに役立つ「キャッシュ・フロー計算書」について解説したいと思います。
現金の流れを知ることの大切さ
決算書には、保有している資産や支払い義務のある負債を一覧表にした「貸借対照表」、年間の売上高や原価、その他の収益や費用を差し引きして利益を表示する「損益計算書」などいくつかの種類があります。ところが、こうした貸借対照表や損益計算書だけを眺めていても、資金の流れは見えてきません。
収支の状況が見えないと資金繰りの判断を誤り、倒産のリスクを高めます。また、倒産にまで至らなくても、どこから資金が生まれ、どこに資金を使っているのか把握していないと、限られた経営資源である資金を効率的に使って経営しているのかどうか判断することができません。
そのため、資金の流れ、すなわちキャッシュ・フローを見渡せるキャッシュ・フロー計算書が有用になってくるというわけです。キャッシュ・フロー計算書は一般的には法人向けの決算書ですが、個人事業主でもキャッシュ・フロー計算書を作成することにより、事業におけるお金の流れを知ることができます。
キャッシュ・フロー計算書の仕組みとは
現預金勘定や預金通帳の入出金記録を見れば、キャッシュの出入り自体は確認できます。しかし、一定の視点で入出金を分類しないと、入出金記録は単なる収支データでしかありません。
キャッシュ・フロー計算書では、資金の収支を「営業活動によるキャッシュ・フロー」、「投資活動によるキャッシュ・フロー」、「財務活動によるキャッシュ・フロー」の3つの視点で把握します。
例えば、仕入れに使った資金、売上により回収した資金などは「営業活動によるキャッシュ・フロー」で把握されます。「営業活動によるキャッシュ・フロー」で生じた余剰資金でパソコンを購入したり、店舗を改装したりした場合には「投資活動によるキャッシュ・フロー」に表示されます。また、銀行から融資を受けたり、借入金を返済したりした場合には「財務活動によるキャッシュ・フロー」に記載されます。
キャッシュ・フロー計算書はどのように作成するの?
例えば、OEM(自社ブランドでの製造を委託する方式)で生産したサプリメントをECサイトで販売する会社を考えてみましょう。
この会社では原材料の購入代金は海外業者にPaypalで前払いするため、登録したクレジットカード会社から1、2ヵ月後に銀行引落があります。OEMメーカーには10%の着手金を支払い、納品後に残代金を銀行振込します。ECサイトでの販売代金は各種手数料が差し引かれたのち、各ECサイトの条件に従って出金処理されます。
キャッシュ・フロー計算書を作る際に、上記のような細かい入出金をすべて拾い出して「営業活動によるキャッシュ・フロー」の区分を完成させるのは大変な作業です。このような方法で「営業活動によるキャッシュ・フロー」の区分を作成する「直接法」のほか、もう少し簡単に作成できる「間接法」という方法もあります。
間接法では、すでにできあがっている損益計算書の利益からスタートして、入出金のタイムラグの原因となる売掛金や買掛金などを加減したり、現金支出を伴わない費用である減価償却費を加算したりすることで「営業活動によるキャッシュ・フロー」の区分を作成します。
これに対して、入出金が把握しやすい「投資活動によるキャッシュ・フロー」と「財務活動によるキャッシュ・フロー」については一般的に直接法の要領で作成されます。
実際にキャッシュ・フロー計算書を作成したい方や構造を理解したいという方は、中小企業庁HPからダウンロードできるExcelワークシートに所定の項目を入力することで作成することが可能です。一度、チャレンジしてみてはいかがでしょう。
売上があっても入金にならない場合も
「勘定合って銭足らず」という言葉のように、損益の計算と実際の入出金は異なります。これは販売時より入金が後になる掛売上のような取引があるために起こる現象です。したがって、決算上は黒字となっているのに資金がショートして倒産に至る「黒字倒産」が起こるのも不思議なことではありません。
普段からキャッシュ・フローを意識していれば事前に対策を講じることも可能です。もちろん、これは法人に限ったことではありません。個人事業でもキャッシュ・フローの把握が重要であることが理解できたのではないでしょうか。(提供:ビジネスサポーターズオンライン)