デジタル、医療・健康、インフラ、個人の安全度を評価した「最も安全な都市ランキング」で、世界60都市中、東京が1位、大阪が3位に選ばれた。2位のシンガポールとともにトップ3は変動なしという結果だ。2015年版 で10位だったニューヨークは21位まで大きく順位を落とした。

トップ10を占めたのは東南アジアと欧州の都市だ。総体的に順位の変動が激しく、メルボルンとシドニーの順位が入れ替わり、トロントや香港が順位を上げたのとは対照的に、オランダのアムステルダム、スイスのチューリッヒなどが順位を下げた。ニュージーランドの首都ウェリントンが初登場で16位という点も興味深い。シカゴ、ロンドン、ロサンゼルスといった混雑した都市では様々な面で安全性が落ちているようだ。

ランキングはエコノミスト・インテリジェンス・ユニット(EIU)が主要都市の安全性指数を、40の項目に基づいて分析、順位付けしたもの 。

最も安全度の高い20都市と2015年順位

20位(18位) ロンドン 82.10
19位(16位) シカゴ 82.21
18位(17位) ロサンゼルス  82.26
17位(22位) ブリュッセル 83.01
16位(初登場) ウェリントン 83.18

15位(12位) サンフランシスコ 83.55
14位(24位) ソウル 83.61
13位(15位) バルセロナ 83.71
12位(21位) マドリード 83.88
11位(20位) フランクフルト 84.86

10位(7位) チューリッヒ 85.20
9位(11位) 香港 86.22
8位(4位) ストックホルム 86.72
7位(6位) シドニー 86.74
6位(5位) アムステルダム 87.26

5位(9位) メルボルン 87.30
4位(8位) トロント 87.36
3位(3位) 大阪 88.87
2位(2位) シンガポール 89.64
1位(1位) 東京 89.80

「デジタルの安全性」は世界1の東京、日本の弱点は「インフラの安全性」

トップ3に2都市がランク入りするという快挙を果たした日本。「デジタルの安全性」で東京が首位、「医療・健康の安全性」で大阪が首位、東京が3位、「個人の安全性」で大阪が3位、東京が4位と高評価を受けた。最大の弱みは「インフラの安全性」で、いずれの都市もトップ10に入っていない。

人々が日常的に利用する建物・道路・橋などのインフラの安全性を確保することは、都市の最優先任務である。最近の事故では、ロンドン西部で2017年6月に発生した低所得層向け高層公営住宅の火災が記憶に新しい。安全保護対策の欠落から約80人の犠牲者をだす惨事となった(BBCより )。

インフラのランキング最下位にはバングラデシュの首都ダッカ、パキスタン南部のカラチ、ミャンマーの旧首都ヤンゴン、エクアドルの首都キト、フィリピンの首都マニラなどが並ぶ。

インフラの向上に財源が必要なことは明らかだが、日本や米国、英国、ドイツといった経済大国の都市がインフラのトップ10にまったく選ばれていない事実から、「財源=インフラの安全度が高い」という方程式が成立しないことが分かる。インフラのトップ5はシンガポール、マドリード、バルセロナ、ストックホルム、ウェリントンだ。

特に米国ではインフラの著しい低下が見られ、このカテゴリーでトップ20入りしたのはサンフランシスコのみとなった。

サイバーセキュリティーでは5都市がトップ10入りの米国

しかし米国はサイバーセキュリティー面で優れており、3位にシカゴ、7位にロサンゼルスとサンフランシスコ、9位にニューヨーク、10位にダラスと、トップ10に5都市も入っている。

サイバーセキュリティーの安全度を最も向上させたのはソウルで、このカテゴリーでは16ランクも上がっている。ウィルス感染件数や個人情報流出件数軽減に成功した結果だろう。同様にシカゴも12ランク、メルボルンも10ランク上げた。

ソウルは大阪と東京が最も高評価を受けた「健康・医療の安全性」でも5位に入ったほか、総合ランキングでは10ランクアップとトップ20都市中最も順位を上げている。

「個人の安全性」が最も高いのはシンガポール。2位はウェリントン、5位はトロントなど。

今回初登場となったウェリントンはニュージーランド首都だ。前首都であったオークランドの方が印象が強いようだが、オセアニア圏の都市の中では人口密度が高いことで知られている。「個人の安全性」ではシンガポールに次いで2位、「インフラの安全性」では5位と、住民が安心して暮らせる環境作りに取り組んでいることが分かる。

今後13年で人口1000万人以上の「メガシティー」が10都市増える?

EIUが前回(2015年)のランキングを発表して以来、世界の都市人口は40億人を超えた。この期間に増えた1.5億人のうち9割以上が、急速な都市化が進む新興国都市への地方住民の流入だという。2016年の時点で人口が1000万人を上回る「メガシティー」が世界中に31都市存在したが、2030年までには41都市へ増えると予想されている。

人口増加とともに住宅、雇用、医療ケア、教育、交通、水道・電力インフラなどへの負担も増すことから、EIUは都市化と安全性における課題は比例すると考えている。特に先進国ではIoT(モノのインターネット)に代表されるテクノロジーを活用した「スマートシティ」化も進んでいるが、安全性の向上に大きく貢献する一方で、各国のサイバーセキュリティー対策の脆弱性が浮き彫りになっている。

先進国・発展途上国を問わず、今後こうした課題に各国・地域がどのように取り組んでいくかが、住民の安全性を決定付けるはずだ。(アレン・琴子、英国在住フリーランスライター)