テクノロジーを効果的に活用し、金融市場の概念改革に大きく貢献した企業を評価する「FinTech100」で、中国スタートアップがトップ10の半分を占めた。昨年に引き続きアントフィナンシャルが首位、衆安保険と趣店/趣分期が2位、3位、陸金所が6位、京東金融が10位という結果だ。

ランキングはKPMGがオーストラリアのH2 ベンチャーズと毎年共同で発表しているもの。先進スタートアップ50社と新興スタートアップ50社で構成されている。各社の評価は「調達した資本総額」「資本の増加率」「地理的多様性」「活動分野の多様性」の項目に基づいて行われた(2016年版参照 )。

先進スタートアップトップ50が2016年に調達した資金は48億ドル、設立からの総資本は270億ドル。対する新興スタートアップトップ50は6億ドル、総資本10億ドルと小規模にとどまる。香港証券取引所への上場で15億ドルを獲得した衆安保険を含め、12社がそれぞれ1億ドル以上の大型調達に成功した。ここでは先進FinTechスタートアップに焦点を当てて紹介する。

FinTech先進スタートアップ・トップ30

FinTech,スタートアップ,ランキング
(画像=Lufaxウェブより)

30位(昨年20位) サークル(Circle) アイルランド
29位(初) ウェルスシンプル(WealthSimple) カナダ
28位(30位) オンデック(OnDeck) 米国
27位(初登場) 51信用?(51Xinyongka /u51.com) 中国
26位(35位) アイゼトル(iZettle) スウェーデン

25位(18位) アワクラウド(OurCrowd) イスラエル
24位(31位) プロスパ(Prospa) オーストラリア
23位(初登場) クローバーヘルス(Clover Health) 米国
22位(初登場) リヴォルト(Revolut) 英国
21位(19位) アファーム(Affirm) 米国

20位(15位) アディアン(Adyen) オランダ
19位(初登場) ソラリスバンク(solarisBank) ドイツ
18位(42位) セキュア―キー・テクノロジーズ(SecureKey Technologies) カナダ
17位(21位) ストライプ(Stripe) 米国
16位(14位) ゼロ(Xero) ニュージーランド

15位(13位) スクウェア(Square) 米国
14位(11位) クラ―ナ(Klarna) スウェーデン
13位(12位) ファンディングサークル(Funding Circle) 英国
12位(16位) ヌーバンク(Nubank) ブラジル
11位(9位) ソーシャルファイナンス(SoFi) 米国

10位(7位) キャベッジ(Kabbage) 米国
9位(10位) 京東金融(JD Finance) 中国
8位(6位) アトムバンク(Atom Bank) 英国
7位(7位) クレディテック(Kreditech) ドイツ
6位(4位) 陸金所(Lufax) 中国 

5位(8位) アヴァント(Avant) 米国
4位(3位) オスカー(Oscar) 米国
3位(2位) 趣店/趣分期(Quadian /Qufenqi) 中国
2位(5位) 衆安保険(ZhongAn) 中国
1位(1位) 蟻金融服務集団(Ant Financial) 中国

融資、決済企業が過半数 ブロックチェーン関連は今後に期待?

ランクインした100社中、トップセクターは融資(32社)と決済(21社)関連だ。取引・資本市場(15社)、保険(14社)、資産(7社)、RegTech・サイバーセキュリティー(6社)、ブロックチェーン・仮想通貨(4社)、データ分析(3社)が続く。

トップ3を独占した中国の跳躍が目立つが、韓国やメキシコ、ポーランドからも初めてランクインした。最も注目されているのはアジア太平洋地域で、全100社の3割を占めている。特にオーストラリアが1割と徐々に頭角を現している。

中国――FinTechスタートアップ勢力に変化の兆し?衆安保険が返り咲き

中国からはトップ10に5社、トップ50に7社がランクイン。トップ10企業数では米国(3社)や欧州(2社)を上回っている。トップ50企業数は米国(18社)と欧州(17社)を下回った。

近年中国FinTech企業の跳躍に焦点が当たっている反面、今年のランキングでは若干の変動が感じられる。昨年から首位を維持しているアントフィナンシャルをのぞき、趣分期は1ランク、陸金所は2ランクダウン。代わって昨年首位から5位にまで降下した衆安保険が2位に返り咲き、京東金融が1ランクアップしている。

トップ50にランクインした企業数はわずか1社だった2014年と比べると6倍に増えているが、昨年からは1社増えたのみだ。

31位には点融(Dianrong)が初ランクイン。38位の融360(Rong360)は2ランクダウンとなった。36位には香港のウィーラブ(WeLab) も入っている。

アジア――オーストラリア、韓国、インド、ニュージーランドからもトップ50入り

オーストラリア3社、韓国、インド、ニュージーランド各1社が、ほかのアジア地域からトップ50にランクインしている。

オーストラリアの中小企業向けオンライン融資プロスパ(24位)は昨年から7ランクアップ。「事業融資をシンプルに」というコンセプトの元 、2012年シドニーで設立された。便利なオンライン申込と審査から振り込みまで24時間以内のスピード融資(最高2.5万ドル)が人気で、現在(2017年12月)までに総額5億ドルの融資を行っている。2015年にはデロイトの「Tech Fast 50」にも選ばれるなど、多方面から注目を浴びている。

ネット通販ローンのジップ・マネー・ペイメンツ(zipMoney Payments/37位)は2013年の設立からわずか2年で上場し、ウエストパック銀行やナショナル・オーストラリア銀行などから500万ドルを調達した(クランチベースより )。

ネット小売業者向け決済ソリューションを提供しているアフターペイ・タッチ (50位)は、利用者数80万人、加盟店6000件という巨大なネットワークを誇る。メルボルンを拠点にクロアチアやシンガポールにも事業を拡大中で、今年6月にはオーストラリア証券取引所に上場 した。

韓国からはP2Pモバイル決済アプリ「トス(Toss)」を提供しているヴィヴァ・レパプリカ(Viva Republica)が35位に。2015年のサービス開始以来、国内で1300万人からダウンロードされ、取引総額は100億ドルを突破している。資金調達ラウンドでPayPalを含む大手企業から、総額7720万ドルを獲得した実力派だ。

インドからトップ50入りしたのは、事業者向けスピード融資レンディング・カート(Lending Kart/33位)。銀行家やデータ科学者、技術者集団によって2014年に設立された。ビッグデータと分析論を活用した効率的で的確な審査法を売りにしている。

クラウド・アカウンティングソフトウェアを提供しているニュージーランドのゼロは、昨年から2ランクダウンで14位となった。

北米――24ランクアップのセキュアキー・テクノロジーズなど

北米地域で大きく順位を上げたのはアヴァントやストライプ、セキュアキー・テクノロジーズなどだ。特にカナダのトロントを拠点とするセキュアキー・テクノロジーズ は昨年から24ランクアップと飛躍的な伸びを見せている。2008年に設立された非営利目的連合で、IBMやカナダの大手銀行と提携し、政府や金融機関、テレコム関連企業などのデータに基づいた信頼性の高い身元確認サービスを提供している。消費者のプライバシーを保護しつつ、オンラインから気軽に身元確認を行えるカナダ初のデジタルIDネットワークである。

インテル(Intel)の投資部門インテルキャピタルやVISA、スコシア銀行、CIBC銀行、TD銀行などから総額9187万ドルを調達している。

3ランクアップした5位のアヴァント は、シカゴを拠点とする少額融資スタートアップだ。2012年の設立以来、世界中で50万人、総額35億ドルの融資を行っている。オンラインで申し込め、わずか5分で審査結果がでる。貸出額は1000~2.5万ドル、返済期間は1~6年、実質金利(APR)は8.8~49.8%とかなり幅広い。

JPモルガン・チェースやハイドパーク・ベンチャー・パートナーズから17.8億ドルを調達。2015年には「消費者債務救出ソリューション」を提供する、カリフォルニアのレディーフォーゼロ(ReadyForZero)を買収 。レディーフォーゼロのサービスは、カードローン地獄に苦しむ一般消費者に具体的かつ現実的な返済計画を提供することで、債務を無理なく減らす手助けをするというものだ。

日本にも2015年に上陸したオンライン決済のストライプ は、4ランクアップで17位に。カリフォルニアで2010年に設立された。VISAやアメリカン・エクスプレスといった大手クレジットカード企業も投資する次世代決済スタートアップの代表的存在。これまでに調達した資金は総額4.4億ドルと桁違いだ。手数料の安さ(1.4~2.9%)でも定評がある。

欧米――ソラリスバンク、リヴォルトなど初登場の新星も

北米に次いでトップ50スタートアップが多い欧州では、アトムバンクやファンディングサークル、クラ―ナ、アワクラウドなどが順位を下げた一方で、アイゼトルが9ランクアップで26位、アディアンが5ランクアップで15位に前進した。

初のトップ50入りを果たしたソラリスバンクやリヴォルトなど、期待の新星も登場している。

最も大きな跳躍を見せたアイゼトル は、2010年にスウェーデンの首都ストックホルムで設立された。小事業者にモバイル決済用の簡易POS(販売時点情報管理)ソリューションを提供している。無料でPOSシステムが使える「ゴー(GO)」と、セールスレポートなどのサービスが利用できる月額20ポンドの「ゴープラス(GO Plus)」から、需要に合ったソリューションが選べる。カード決済は一律1.75%、請求サービスは一律2.5%と手数料も手頃だ。

アムステルダムを拠点とする決済サービス・スタートアップ、アディアン は、VISAやマスターカードを含む世界250種類の決済法に対応している。2006年の設立から急成長を遂げ、現在はサンフランシスコ、ロンドン、パリ、ベルリン、シンガポール、ニューヨーク、上海など、世界13都市 にオフィスを構えている。

Uber、Netflix、LinkedIn、KLM、イージージェット(EasyJet)、エバーノート(Evernote)を筆頭とする国際大手企業を多数顧客に持 っているという点で、ほかのライバル・スタートアップとは一線を画している。

フェリシス・ベンチャーズ(Felicis Ventures)やアイコニックキャピタル(ICONIQ Capital)などから総額2.6億ドルという巨額の資金を獲得しているのも納得だ。

初登場のリヴォルト は国境を越えたモバイルバンキングアプリで、国際化の進む社会の需要に対応している。ロンドンで2015年に設立された。

スマートフォンから世界中に送金ができるだけではなく、仮想通貨の両替も可能。26種類の通貨に対応しているカードを申し込めば、マスターカード加盟店で支払いを行ったり、最高200ポンド(約3万円)までATMで現金を引きだすこともできる。こうしたサービスをすべて無料で提供しているというから驚きだ。月額利用料6.99ポンド(約1056円)で特典が付くプレミアム会員にもなれる。

マスターカードのスタートアップ支援プログラム「スタートパース(Mastercard Start Path)」 や、欧州のシードファンド「シードキャンプ」 などから総額8645万ドルを調達している。

FinTechという概念が企業や消費者間で定着した今、さらなるスタートアップの多様化が期待できるのではないだろうか。(アレン・琴子、英国在住フリーランスライター)

【編集部のオススメ記事】
2017年も勝率9割、株価好調の中でもパフォーマンス突出の「IPO投資」(PR)
資産2億円超の億り人が明かす「伸びない投資家」の特徴とは?
株・債券・不動産など 効率よく情報収集できる資産運用の総合イベント、1月末に初開催(PR)
年収で選ぶ「住まい」 気をつけたい5つのポイント
元野村證券「伝説の営業マン」が明かす 「富裕層開拓」3つの極意(PR)